うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

特任講師観察記断章

特任講師観察記断章。「金は出すが口は出さない」と「金を出したから口を出す」。

特任講師観察記断章。「金は出すが口は出さない」と言えるほどの金を持ったこともなければ、そのようなことを言いたくなる相手にもいまだめぐり合っていない身では、あくまで想像するだけなのだけれど、この言葉の根底にあるのは賭けなのだと思う。博打精神…

特任講師観察記断章。やらないことで発生するかもしれない不利益を怖れる。

特任講師観察記断章。やることで得られる利益を逃すことよりも、やらないことで発生する不利益を怖れている。学生たちの態度をまとめれば、そうなるような気がしている。 自分で読み込むよりさきに、とにかく聞いてみるというのが学生の基本態度であるらしい…

特任講師観察記断章。泥沼状態、擦り切れるような疲れ。

特任講師観察記断章。泥沼状態としかいいようのない。通常なら8割くらいの準備で授業にのぞんで、それでちょうどよいぐらいなのに――というのも、10割まで準備しすぎると、余白がなさすぎて、教室の場に反応することができなくて、一方的に話すことになってし…

特任講師観察記断章。けだるげな朗読と悪くない英語の発音。

特任講師観察記断章。ひとつ講義サンプルを作って気をよくしたのか、ざっと2回目の講義スクリプトを書き出し、またその一部を録音してみたところ、やはり声はあまりにやる気なさそうで、あまりにもけだるげな朗読になったけれども、自分の英語の発音は、まあ…

特任講師観察記断章。やる気なさそうな声。

特任講師観察記断章。丁寧に書き込んだ講義スクリプトを、やる気なさげに読んで録音したら、思った以上にやる気なさそうな声で撮れてしまった音声を、パワーポイントと合成してみるものの、何度聞いてもやはりものすごくやる気なさそうな声だ。自分の声を聞…

特任講師観察記断章。失敗する「社会距離戦略」。

特任講師観察記断章。「社会距離戦略」が生協食堂でひっそりと展開されている。4人掛けのテーブルから椅子が2脚取り払われ、残りの椅子も真向かいではなく対角線上に、互い違いに配置されている。にもかかわらず、気づいたかぎりでは、どこにもなぜそんなこ…

特任講師観察記断章。音にたいする不感症。

特任講師観察記断章。今年度の教育業務はほぼ終了した。英語を教えるほどに、日本の英語教育のなかにある根本的な欠落を痛感するようになってきた。 おそらくその欠落を生み出したのは会話やコミュニケーション偏重という動きだろう。もちろん、それによって…

特任講師観察記断章。「させていただく」の支配。

特任講師観察記断章。たしかにたったひとりの再テストのために再びテストを作成するような手間はかけられないとは言った。何をやればいいですかとこちらにただ聞くはやめてくれ、何をすべきなのか自分で考えてきてほしいとも言った。それから、徒労でしかな…

特任講師観察記断章。脱魔術化されすぎた世界での啓蒙の所在なさ。

特任講師観察記断章。「そうはなりたくはない他者」(忌避の他者)、「そうなることはできない他者」(畏怖の他者)、要するに、「いまここにいる自分とは異なった存在」のことにも思いをはせ、そのような存在をも理解しようとすること、そこにこそ、人文的…

特任講師観察記断章。余計なこと。

特任講師観察記断章。「余計なこと「を」しない」というのが今の学生の基本的態度だと思うのだけれど、それはいってみれば、近代資本主義の根底にある分業制を生活のあらゆる側面にまで拡大したようなものだ。フォーディズムにおいて、流れ作業につく労働者…

特任講師観察記断章。「安全」でない場所としての教室。

特任講師観察記断章。授業終了時間の理解について、学生たちと自分のあいだには明らかな齟齬があるようだ。こちらとしては、時間ピッタリには始めないのだから、時間一杯までやっていいと思っているのだけれど、学生たちは残り10分ぐらいの時間帯になると明…

特任講師観察記断章。「身の丈」。

特任講師観察記断章。「身の丈」発言についていろいろ考えてしまう。文科相がそれを言うのかという批判はもっともだけれど、安倍政権がネオリベ的な自己責任論――不平等に配られたカードによる平等なゲーム――を前提にしているのだから、政権内部にいる大臣が…

特任講師観察記断章。身体の強張り。

特任講師観察記断章。学生たちの身体の強張りをどうしたらいいのか。言語が音であり、音が空気の振動である以上、身体という楽器は息づく呼吸によってときにしなやかに奏でられ、ときにするどく打たれなければならないというのに、学生たちの身体反応はあま…

特任講師観察記断章。日本の縦長の教室。

特任講師観察記断章。先々週、学会発表のために、関東圏の私立大学と国公立大学を訪れることになって、そこでいくつかの教室を見て気づいたのだけれど、日本の教室はどうしてこうも縦長なのだろう。実家近隣の公立の小中高は、どこも正方形にちかい比率だっ…

特任講師観察記断章。長い長いメール。

特任講師観察記断章。「もし授業評価点で単位取得できるということがわかったらそれで安心して夏を満喫して来学期末にまた同じやりとりを繰り返すことになるのだろうかという危惧は少なからずありますし、授業評価点で単位取得できることが期末テストの結果…

特任講師観察記断章。下から目線の「空気読んでくれますよね?」の態度。

特任講師観察記断章。甘えるような媚びるような、しかし、そのように振る舞えば自分の要求はきっとわかってくれるはずだという確信と期待に充ちた下から目線の「空気読んでくれますよね?」にたいして、どう対応すべきか。 学生たちの振る舞いが、これまでの…

特任講師観察記断章。3次元的な音のフロー。

特任講師観察記断章。今学期の少なからぬ時間を使って音読を仕込んでみたけれど、いくつか見えてきたことがある。音量(アクセント)、音高(イントネーション)、音長(リズム)の3つのなかでことさら身に付きにくいのが音の長さの感覚であるのはどうやら…

特任講師観察記断章。「正しさ」ではなく「美しさ」を。

特任講師観察記断章。最近とくに思うのは、英語の音読をやらせるのなら、「正しさ」ではなく「美しさ」を語ったほうがいい、ということだ。正しさで語ってしまうと、ひとつの絶対的な尺度が前提され、唯一無二の「お手本」を真似ることが自己目的化してしま…

特任講師観察記断章。英語的知性。

特任講師観察記断章。「みなさんは自分の英語がどれくらい知性的なものだと思いますか? みなさんは中高とおして少なくとも6年以上は英語を勉強している。そしていまは大学生です。にもかかわらず、日本語でならどうにか出来なくもないはずの、社会問題につ…

特任講師観察記断章。瞬間脳内対話。

特任講師観察記断章。ジェンダー二進法にからめとられないように話すこと。「彼」というところを「彼や彼女」とするだけでも微妙に文字数が増えるし、「○○な人たち」というのを機械的に「彼ら」とは受けずに「○○な人たち」と繰り返すのは冗長だ。限られた授…

特任講師観察記断章。フリの重要性。

特任講師観察記断章。「真面目に聞けとは言わない。そこまでは言わないけれど、真面目に聞いているフリはできるようになってほしい。興味をもって熱心に聞くというのが最上なのは言うまでもない。興味がないから攻撃的につまらなさそうに聞くというのも大学…

特任講師観察記断章。自分のスピーチパターンの自己検閲。

特任講師観察記断章。自分のスピーチパターンを自己検閲する。いま英語で話そうとすると、かなり自然に言葉は出てくるけれど、それは要するに、使えるレパートリーが限定的だから、選択肢の幅が狭く、迷う必要が少ないだけでもある。だからだろうか、英語で…

特任講師観察記断章。客観的な解説と主観的な描写のあいだの埋まらないギャップ。

特任講師観察記断章。英語の音の連結や脱落のルールを教えるのはそれほど難しくないが、実践させるのはなかなか骨が折れる。 たとえば、どうすればNot at allが英語らしく響くか。Not/ at/ allという三つのブロックのあいだがつながる――子音で終わり母音で始…

特任講師観察記断章。量的な蓄積、質的な飛躍。

特任講師観察記断章。かなり多くの学生に共通する間違いがある。あまりにも初歩的なものなので、なぜここまで正されずに来たのかと首をかしげてしまうような間違いがある。たとえば名詞末尾の複数形のSを読み落とす、Yes/No疑問文のイントネーションを上げ…

特任講師観察記断章。最初の言葉。

特任講師観察記断章。「入学おめでとうございます、と言うべきところなのでしょうけれど、いま考えて欲しいのは、これからどうするのか、どうしたいのか、という問題です。これまでは大学受験というわかりやすい目標があったし、どのくらい点をとれば合格で…

特任講師観察記断章。机の上に築かれるバリア。

特任講師観察記断章。ものすごく些細なことだけれど、もしかしたらとても大事かもしれないこと。なぜ学生は机の脇ではなく前に物を置くのだろう。ペンケース、ペットボトル、電子辞書、紙の辞書、スマホ。まるで教壇に立つ教師とのあいだに壁を作るかのよう…

特任講師観察記断章。些細だけれど大事かもしれないこと。

特任講師観察記断章。ものすごく些細なことだけれど、もしかしたらとても大事かもしれないこと。 なぜ学生は机の脇ではなく前に物を置くのだろう。ペンケース、ペットボトル、電子辞書、紙の辞書、スマホ。まるで教壇に立つ教師とのあいだに壁を作るかのよう…

特任講師観察記断章。ミクロなところを少しずつ。

特任講師観察記断章。今日はTOEIC学内テストの追試の試験監督をやった。とはいえ、セッティングの大半は他のスタッフがすでにやってくれていた。だから、こちらの仕事は本当にごくわずかなことだった。 たとえば、部屋に来た学生に名簿を見せて、自分の名前…

特任講師観察記断章。無意識のうちにやっていることを意識化するための手がかりを。

特任講師観察記断章。なぜ情報処理の効率が悪いのだろうか、と考えてしまうことがある。そしてそれに続いてこうも考える。いや、なぜわたしはこの手の情報処理がそれなりに効率よくできるのだろうか、と。ここにはいくつかのステップがある。情報の配置=レ…

特任講師観察記断章。ほめて、しかって、しめくくる。

特任講師観察記断章。ほめて、しかって、しめくくる。学生のプレゼンについてはできるだけその場で直ちにコメントを出すようにしているし、できるだけ褒めるようにしている。まずは褒めて、持ち上げる。改善点は後から指摘する。しかし、そのさいも、「ダメ…