うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

効率性と意味充実にたいする反旗:千葉雅也『意味がない無意味』  (河出書房新社、2018)

効率性と意味充実にたいする反旗、それが千葉のプロジェクトの概要だろう。効率的にやること、それは出発点と着地点を最短距離で結ぶというモデルであり、そのためには能動性と自発性を主軸に据えた主体が必要とされる。しかし、そうした主体は、他を暴力的…

正史の余白に書きこむ:古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』(新潮社、2011)

すばらしく力のある書き手の本だ。ポストモダン的と言っていいのだろう。フィクションとノンフィクションのはざまにあるテクストだ。ジャンルが流動的で、自己言及的で、仮想のキャラと現実の書き手が交錯し、現実の出来事(311)と過去の歴史(についての思…

ポピュリズムを政治的に表象するために:シャンタル・ムフ、山本圭・塩田潤訳『左派ポピュリズムのために』(明石書店、2019)

陳腐なことを言っているように聞こえる。 私が強調しておきたいのは、民主主義を再生するためのヘゲモニー闘争は、国民国家のレベルで開始する必要があるということだ。多くの権限を失ってしまったものの、にもかかわらず国民国家はいまだ、民主主義と人民主…

スティーヴ・バノン、イスラエルのハアレツ紙のインタビュー記事「なぜ反ユダヤ主義ではないのか」

https://www.haaretz.com/world-news/.premium.MAGAZINE-steve-bannon-tells-haaretz-why-he-can-t-be-anti-semitic-1.6316437 「民主党がアインデンティティ・ポリティクスについて語れば語るほど、こちらに有利になる。民主党には人種差別について毎日のよ…

本源的な自発性への賭け:栗原康『アナキズム:一丸となってバラバラに生きろ』(岩波新書、2018)

ここにあるのは本源的な自発性への賭けだ。いまのこの社会には抑圧がある。社会的なもの、制度的なもの、家庭的なもの、文化的なもの、歴史的なもの、経済的なもの、権力的なもの。原因はさまざまだが、何かしらのかたちでタガがはめられている。それを解き…

特任講師観察記断章。些細だけれど大事かもしれないこと。

特任講師観察記断章。ものすごく些細なことだけれど、もしかしたらとても大事かもしれないこと。 なぜ学生は机の脇ではなく前に物を置くのだろう。ペンケース、ペットボトル、電子辞書、紙の辞書、スマホ。まるで教壇に立つ教師とのあいだに壁を作るかのよう…

特任講師観察記断章。机の上に築かれるバリア。

特任講師観察記断章。ものすごく些細なことだけれど、もしかしたらとても大事かもしれないこと。なぜ学生は机の脇ではなく前に物を置くのだろう。ペンケース、ペットボトル、電子辞書、紙の辞書、スマホ。まるで教壇に立つ教師とのあいだに壁を作るかのよう…

特任講師観察記断章。ミクロなところを少しずつ。

特任講師観察記断章。今日はTOEIC学内テストの追試の試験監督をやった。とはいえ、セッティングの大半は他のスタッフがすでにやってくれていた。だから、こちらの仕事は本当にごくわずかなことだった。 たとえば、部屋に来た学生に名簿を見せて、自分の名前…

特任講師観察記断章。無意識のうちにやっていることを意識化するための手がかりを。

特任講師観察記断章。なぜ情報処理の効率が悪いのだろうか、と考えてしまうことがある。そしてそれに続いてこうも考える。いや、なぜわたしはこの手の情報処理がそれなりに効率よくできるのだろうか、と。ここにはいくつかのステップがある。情報の配置=レ…