うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

特任講師観察記断章。机の上に築かれるバリア。

特任講師観察記断章。ものすごく些細なことだけれど、もしかしたらとても大事かもしれないこと。なぜ学生は机の脇ではなく前に物を置くのだろう。ペンケース、ペットボトル、電子辞書、紙の辞書、スマホ。まるで教壇に立つ教師とのあいだに壁を作るかのように。なかには本当に盾のように使い、裏でこそこそスマホをいじっている不届き者もいるにはいる。けれど、大半の学生は深い考えもなくなんとなくそうしているように見える。学生たちの本当の思惑がなんであれ、教師と学生を結ぶラインのうえに置かれた物体は、障害物として機能するだろう。すくなくとも潜在的なレベルでは。すくなくともわたしにとっては。大多数の学生が無意識的に心理的な防壁を築こうとしているこの状況はいったい何なのだろう。