うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

道徳的比喩としての戦争の問題(ル=グウィン「あとがき」『ゲド戦記』)

"War as a moral metaphor is limited, limiting, and dangerous. By reducing the choices of action to "a war against" whatever-it-is, you divide the world into Me or Us (good) and Them or It (bad) and reduce the ethical complexity and moral r…

『ブックセラーズ』のまとまりのなさ

10人ほどのブックセラーの群像劇という感じ。ただ、ブックセラーといっても、基本的に稀覯本を扱う人々であり、一般の本屋を期待していたので、すこし裏切られた気分。 10‐15分ほどの短いシークエンスをつないだ作りで、アテンションスパンが短くなってしま…

『ノマドランド』のなかの美的なものと経済的なもの

@20210601 CineCity Zart いい映画だ。自然の映像が美しい。荒れ狂う波、広大な砂漠、遠景の山脈。それから作業場の機会の崇高さ。アマゾンの配送センター、掘削場のようなところ、バーガーレストランの調理場。 ファーンという女性を軸に物語は進んでいく。…

死に魅入られた芝居:宮城聰演出、ソポクレス『アンティゴネ』

20210505@駿府城公園 死に魅入られた芝居――そんな言葉を宮城聰演出のソポクレス『アンティゴネ』に投げかけてみたい誘惑に抵抗しなければならない。これは死者のドラマではない。水をたたえた暗い舞台、中央には灯篭のように積み上げられた人の身長よりも高…