うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

20230223 「富士山の日」フェスタ2023に行く。

2月23日は「富(2)士(2)山(3)」の日。最初に制定したのは山梨県の富士河口湖町。2001年のことだった。その大元にあったのは1998年に静岡県と山梨県が共同で作成した富士山憲章だが、両県で2月23日が富士山の日と条例で定められるまでには、10年以上…

猜疑と信頼をめぐる思想戦:劉慈欣『三体』

真実の宇宙は、ただひたすらに暗い . . . 宇宙は暗黒の森だ。あらゆる文明は、猟銃を携えた狩人で、幽霊のようにひっそりと森の中に隠れている。そして、行く手をふさぐ木の枝をそっとかき分け、呼吸にさえ気を遣いながら、いっさい音をたてないように歩んで…

20230220 『Blue Giant』を見る。

ひたすら熱く、ひたすら激しい。ここまで真っすぐな物語を見せつけられると、白けそうになるところだけれど、そうした皮肉さまでをも青白く燃えあがらせるほどの、ど真ん中ストレートの物語。 それはもしかすると、若さゆえの純真さなのかもしれない。 しか…

20230222 『タイタニック』を見る。

見る前は3時間20分は長いだろうと思ったし、1時間ぐらいたったところで「まだあと2時間以上あるのか」と感じたけれど、なんだかんだで最後まで惹きつけられて、否応なく感動させられてしまった。強い映画だ。 とはいえ、物語としてはオーソドックス。身分違…

20230219 『鶴見俊輔、詩を語る』を読む。

トンチンカンな詩の読み方がものすごく意味の領域を広げるんだね。(34頁) 詩人の谷川俊太郎と教え子の正津勉を相手に行われた鼎談の記録だが、鼎談というよりは鶴見俊輔が語り、ふたりが合いの手いれるという感じ。 タイトルは「詩を語る」となっているが…

20230215 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2D字幕版)を見る。

3時間20分は長い。映像の美しさは素晴らしいと思うし、それを最大限生かした自然描写——森の木々、海の生物——には目を見張るものがある。しかし、ストーリーはまったく古典的な復讐劇と家族愛の物語であり、ここまでの装置を使ってそこまでオーソドックスなお…

20230216 谷本真由美『世界のニュースを日本人は何も知らない』123を読む。

1周回った「日本すごい」本とでも言おうか。谷本が念頭に置いている批判対象は、書名にあるとおり、世界のニュースを何も知らない日本人一般ではあるけれど、より具体的に言えば、左翼系のリベラルなメディアではないか。「欧米」という雑なくくりで、欧米の…

超時代的な、いまだ来たらぬ未来の音楽:カール・シューリヒトの特異性の歴史性

カール・シューリヒトの自由闊達な、天衣無縫な指揮は、はたして、どの程度まで彼独自のシンギュラーなスタイルだったのだろうかと考えてしまう。 60年代のコンサートホールに残した一連の録音は、オーケストラの非力さにもかかわらず、そのきらめくのような…

プレーンな豊饒さ:連東孝子訳『W.S.マーウィン選詩集1983‐2014』

47年4月、精神病院に隔離されていたエズラ・パウンドを訪問し、文通が続く。パウンドから「枝葉ではなく種子を読み取るべし。EP」と書いた鉛筆書きのはがきが届く。(195頁) 抱くことのできないもので星は創られている from what we cannot hold the stars …

書いては消す(呉明益『複眼人』)

「この紙に繰り返し小説を書き、消してはまた別の小説を書き、書いてはまた消す。そしていつか誰かがこの小説を読んだ時には、一篇の小説ではなく実は無数の小説になっているかもしれない。」(呉明益『複眼人』144頁)

自由(ラングストン・ヒューズ「民主主義」)

「死ぬときに自由なんていらない。/明日のパンじゃ今日は生きられない。/自由/という強い種/が植え付けられた/のはそれがとてもとても必要とされているところ。/ここに生きているのだ、わたしも。/わたしは自由を欲している/きみと同じさ。[I do not…

20230131 セルマ・ラーゲルレーヴ『ニルスのふしぎな旅』を読む。

全世界の人々の共有財産である広大な海(下450頁) ニナ・バートンの『森の来訪者たち』という素晴らしいエッセイ――コテージをリノベーションするという話を縦糸にして、そのなかで出会っていく動物たちのことを、生物学的な知見や作者の過去の記憶という横…