2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧
翻訳語考。英単語の音をカタカナで転写するのは翻訳の放棄ではあるものの、カタカナ語が十分に日本語になっていれば、翻訳者の怠慢とまでは言えない。それに、下手に古臭い日本語にするよりも、カタカナにしたほうがフレッシュで、現代的なニュアンスを強く…
アラン・アルティノグリュのリズム感覚は何か非常に特殊なものかもしれない。彼の指揮する音楽を聞いていると、各パートにそれぞれ特有のテンポを割り振っており、彼がそのような複層的な時間構造を上位の次元で統合しているのではと思わされる。もちろん、…
翻訳語考。Well-ordered のような単語を日本語にするのは意外と難しい。リーダーズが掲げる日本語は「よく整理(整頓)された、秩序立った」。「well」をどこまで訳出すべきか、やはり考えてしまう。リーダーズの「(整頓)」はそのような逡巡の現われのよう…
久しぶりにラファエル・クーベリックとバイエルン放送響がデジタル録音初期の1980年に録音したモーツァルト後期交響曲集を聞いて「いい演奏だな」としみじみ思ってしまった。ブルーノ・ワルターとコロンビア響やNYPによる1950、60年代のモーツァルトがいまや…
翻訳語考。Federation を何と訳したものか。 国家形態を意味する語としては「連邦」とするのが妥当だろう。たとえば「ロシア連邦」は「Российская Федерация (Russian Federation)」であるし、「ドイツ連邦共和国」は「Bundesrepublik Deutschland (Federal …
正直、プルードンはよくわからない。『所有とは何か』はむかし日本語で読み、その後にフランス語でも読んだけれど、プルードンの論理の運びにうまくついていけないのだ。テクストの肌理にもなじめないところがある。唐突に感じられるところ、飛躍に感じられ…
20240921 「西洋絵画の400年」展@静岡市美術館 「西洋絵画の400年」というキャッチコピーが大写しになったポスターを街でよく見かけてはいたけれど、しっかり注意して見てはおらず、何となく「ヨーロッパのどこかの美術館からの貸出展か」と勝手に思ってい…
翻訳語考。比較級というのは実は厄介なものである。というのも、そこには、明言されていない文脈があり、言外のイメージがあるため、直訳すると言葉足らずになりがちだからだ。 Three more recent examples are worth a mention を「より近年の三例は言及に…
翻訳語考。-ist についてもうひとつ。個人的には、形容詞の「-ist」を「イスト」と転写して、あたかも名詞形「-ist」の「~人」のように読ませるのは、翻訳者の傲慢だとは思うけれど、そのようにあえて「誤訳」したほうがわかりやすくなるケースはある。 た…
翻訳語考。以前、-ist は名詞で使えば「~人」で、形容詞で使えば「~的」だが、そのことを十分に意識しないまま -ist をカタカナに転写して済ませるのは問題ではないかと書いたけれど、これはなかなか面白い問題であるような気もしてきた。 つまり、nationa…
翻訳語考。as I will show in this chapter というのは、よく目にする定番フレーズではあるものの、あえて直訳調スタイルの翻訳を実践する身としては、処理に困る言い回しでもある。 もちろん意味としては簡単だ。「わたしがこの章で示すように」と直訳すれ…
翻訳語考。Govern は「統治」で確定だろうとやや安易に思っていたのだけれど、OED を引いてみたら、訳語を考え直すべきかという気もしてきた。 一番の驚きは、govern の最初の意味として挙がっていたのが「統治する」ではなく、ヴィクトリア朝期の小説読者に…
翻訳語考。Rule of law は「法の支配」でよいのだろうか。ここでは rule の訳語について考えてみたい。 当然ながら、rule を「支配」とすることが誤訳ということはない。ただ、英語には、「支配」の意味をもつ単語はいくつもある。名詞では control、dominat…
シェーンベルクの音楽が自分にとっては自律した細部の譲らない自己主張から生まれる「軋み」の体験だとすると、ベルクは細密さが過ぎるがゆえにカオスに転落しつつある「複雑性」の体験である。シェーンベルクの音楽がどこか生臭く、青白く、ささくれ立った…
シェーンベルクの音楽には何とも言えない軋みを感じる。旋律の占める要因が高いようには思うが、和声の問題でもある。要するに、音と音がどこか溶け切らず、ぶつかり合ってしまっているように聞こえるのだ。各音の自己主張が強すぎて、誰も譲ろうとしない。…