うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

湯浅博雄『贈与の系譜学』(講談社選書メチエ、2020):西欧キリスト教世界における「贈与の系譜学」?

バタイユ/ブランショ/レヴィナスのラインで考えればそうなる(ニーチェからモース、そしてヘーゲル)のは当然だが、ネタがわかっている側からすると、このような贈与についての思索には、何番煎じかという印象を抱かざるをえない。それに、キリスト教精神…

雑な全体性のむこうにある精神:音楽家としてのダニエル・バレンボイムの音楽

ダニエル・バレンボイムの演奏は微妙に雑だ。彼の音楽は確かに全体性を捉えている。だからとても見通しがよい。旋律が歌っている。抒情性がある。勘所は外さない。しかし、瑕疵がある。 音楽のことを本当によくわかっている音楽家の音楽。バレンボイムによる…

バレンボイムの晩年の様式

バレンボイムも80歳近くなり、さすがに体が利かなくなってきた部分があるのか、足を揃えてすっと指揮台に立ったまま、ほとんどそこから動かない。上下運動が基調となるタクトの振れ幅は大きくない。もしかするとあまり肩が上がらないのかもしれない。しかし…

特任講師観察記断章。「ルールを守る」というメタ・ルール。

特任講師観察記断章。「ルールを守る」というのは、ルールそれ自体には含まれていないメタ・ルールであり、ゲーム参加の大前提だ。ゲームの具体的なルールのために、自らの自由を制約することを自発的に受け入れることを意味する。公的で集団的な営為である…

デフォルメする権利:ブルーノ・マデルナの恣意的な非主観性の音楽

ブルーノ・マデルナの指揮はデフォルメと切り離して考えることができないけれども、なぜデフォルメがあるのかの理由を語ることは難しいし、彼のデフォルメを方法論的に説明することはさらに困難だ。 情念的な粘っこい歌い回し、スローテンポ、引き伸ばし、ゲ…

特任講師観察記断章。「金は出すが口は出さない」と「金を出したから口を出す」。

特任講師観察記断章。「金は出すが口は出さない」と言えるほどの金を持ったこともなければ、そのようなことを言いたくなる相手にもいまだめぐり合っていない身では、あくまで想像するだけなのだけれど、この言葉の根底にあるのは賭けなのだと思う。博打精神…

コロナ以後の演劇を再興する:『蜘蛛の糸』(作:芥川龍之介、演出:吉見亮)

20201004@やどりぎ座、『蜘蛛の糸』(作:芥川龍之介、演出:吉見亮) コロナ禍が強いるものがどこまでこの舞台を縛っているのか、そして、強制されたものでしかなかったものがどこまで舞台のために役立てられているのか。吉見亮演出の『蜘蛛の糸』を見なが…

特任講師観察記断章。ひさしぶりの対面授業。

特任講師観察記断章。今日今学期最初の対面授業の教室に向かいながらふと最後に教壇に立ったのはいつだったかと思いそれが2月のこと、8ヵ月も前であることに気がついて愕然としたけれども、30人近い学生を前にしてややぞんざいな感じで英語でしゃべりだすと…