雑読記
1周回った「日本すごい」本とでも言おうか。谷本が念頭に置いている批判対象は、書名にあるとおり、世界のニュースを何も知らない日本人一般ではあるけれど、より具体的に言えば、左翼系のリベラルなメディアではないか。「欧米」という雑なくくりで、欧米の…
ジェンダー史を学ぶこと、それはわたしたちのジェンダー概念を問い直すこと、その起源や変遷をたどりなおすことでもあり、その意味で、歴史は現代における世界認識や世界理解に衝撃を与えるものである。 ジェンダー史は、女についてのもの(だけ)ではない。…
「孔子は「學則不固(学ぶことによって考え方や行動が柔らかくなる)」と言いましたが、彼らは「やわらかいものには知能が宿る」と捉えているのです。」(鈴森康一『いいかげんなロボット』119頁) キッチン用品でシリコン製のものがポピュラーになったのは…
まさに魂のこもったテクスト。ブルックナーにたいする愛にあふれている。 しかし、ブルックナーを美化し、聖人に祀り上げるのは、著者のめざすところではない。本書は、一方においては、わたしたちのステレオタイプ的なブルックナー像を強化する。なるほど、…
ウィルソン夏子のテクストには独特の手ざわりがある。純粋な伝記としては、彼女の記述は粗いだろう。誠実ではあるし、的確ではあるが、厚くはない。 しかし、にもかかわらず、彼女の伝記は、電話帳のように分厚い伝記よりも圧倒的に鮮烈だ。それは、彼女が、…
雑な読書メモを書いておこう。読んでいるテクストにたいする直感的で瞬間的な反応。テクストを正しく説明しているかどうかは気にしない。客観的な正しさではなく、主観的な気づきを記してみたい。 「忌まわしい過程は必然的に忌まわしい結果を生むという考え…
バタイユ/ブランショ/レヴィナスのラインで考えればそうなる(ニーチェからモース、そしてヘーゲル)のは当然だが、ネタがわかっている側からすると、このような贈与についての思索には、何番煎じかという印象を抱かざるをえない。それに、キリスト教精神…