うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2014-01-01から1年間の記事一覧

アメリカ観察記断章。クリスマス料理(はあるのか)。

アメリカ観察記断章。日本において季節の出来事は特定の料理と結びつくが(新年と御節)、アメリカだとこれは食材との結びつきと言ったほうが正しいかもしれない(感謝祭と七面鳥)。スーパーに行ってもこれぞクリスマスのための料理というものがない。もち…

知的な話ができない(ブレヒト『コイナー氏の話』)

""We can't go on talking to each other," said Mr. K. to a man. "Why not?" asked the latter, taken aback. "In your presence I am incapable of saying anything intelligent," complained Mr. K. "But I really don't mind," the other comforted him…

アメリカ観察記断章。耳で聞いたものを書き出すアメリカの学生たち。

アメリカ観察記断章。やっと期末レポートの採点が終わった。丁寧な推敲もなく無頓着に書きなぐられたと思しきアメリカの学生(自分が教えているのは理系の学生だが)の文章を読んでいると、彼女ら彼らが言葉をまずなにより耳でとらえているのだなと思い知ら…

教科書にたいする真っ当な批判

UCI

One of my students wrote (and I completely agree with this student), "I will admit that the Anteater’s Guide to Writing Rhetoric was long and boring. The book tried so hard to appeal to its’ target audience by adding in colloquial language…

考えられないものを考える(キルケゴール『哲学的断章』)

"But the highest pitch of every passion is always to will its own downfall; and so it is also the supreme passion of the Reason to seek a collision, though this collision must in one way or another prove its undoing. The supreme paradox of…

抑圧による進化(フロイト『快楽原則の彼方に』)

"I have no faith, however, in the existence any such internal instinct [towards perfection] and I cannot see how this benevolent illusion is to be preserved. The present development of human beings requires, as it seems to me, no different…

自分を劣った方に入れる分類(チェスタトン『正気と狂気の間』)

"About all those arguments affecting human equality, I myself always have one feeling, which finds expression in a little test of my own. I shall begin to take seriously those classifications of superiority and inferiority, when I find a m…

英語の空間/場所のペア

UCI

In English the space/place pair is amazingly multifunctional and it's very easy to differentiate the abstract from the concrete, the conceptual from the actual, the geometrical from the geographical. Is there such a versatile pair concerni…

連続と非連続(ウィリアム・ジェイムズ「哲学の諸問題」)

"The great difference between percepts and concepts is that percepts are continuous and concepts are discrete...No matter how small a tract of [the perceptual flux as such] be taken, it is always a much-at-once, and contains innumerable as…

アメリカ観察記断章。カリフォルニアで耳にする外国語。

アメリカ観察記断章。今年度は明らかに韓国(系)と中国(系)の学生をキャンパスのいたるところで数多く目にしている。カリフォルニアに行くことでここまで自分の耳が中国語や韓国語に晒されることになるとはまるで予想もしていなかった。しかし現実はこれ…

アメリカ観察記断章。カップルのふるまい。

アメリカ観察記断章。日本において人前でいちゃつくカップルは例外的だろう。軽く抱き合うくらいならともかく、人目のある公共の場で大っぴらにキスをすることはまれであるように思う。しかしアメリカだとごく普通に見かけるし、驚きなのは、それを誰も気に…

アメリカ観察記断章。アメリカの商業施設の相対的な静かさ。

アメリカ観察記断章。アメリカの商業施設は日本のそれよりはるかに物静かだ。過剰なBGMがないからだろう。何かしらの音楽は流れていることのほうが多い。しかし無音に近いところもある。実際、今日ブラック・フライデーの余波を見るために足を運んだ南カリフ…

詩心の養成(シェリー「詩の擁護」)

"The cultivation of poetry is never more to be desired than at periods when, from an excess of the selfish and calculating principle, the accumulation of the materials of external life exceed the quantity of the power of assimilating them …

アメリカ観察記断章。感謝祭シーズン、家族とバーゲン。

アメリカ観察記断章。アメリカ社会には明確なリズムが刻まれている。その最たるものがサンクスギビング・デーだ。もはや祝日だろうとおかまいなしに四六時中開いている店がある日本からすると驚きなのは、感謝祭の日、アメリカ社会全体が完全な期休止状態に…

概念は別物(ウィリアム・ジェイムズ「哲学の諸問題」)

"The concept dog does not bite; the concept cock does not crow." (William James. Some Problems of Philosophy.) 「イヌという概念は吠えない。オンドリという概念は鳴かない。」(ウィリアム・ジェイムズ「哲学の諸問題」)

アメリカ観察記断章。「教育は権利だ!」

アメリカ観察記断章。先日の学費値上げ反対プロテストのなかでも聞いたスローガンにpublic education should be freeというものがある。「公教育は無料であるべきだ」という掛け声はいつも何かしっくりこないものを感じていたけれど、education is not a pri…

アメリカ観察記断章。求道の欠如。

アメリカ観察記断章。日本は良くも悪くも「道」を求めすぎる。この最悪の実例は体育会系精神論だろう。だがしかし、アメリカにこういう心構えがまるでないらしいというのもどうかとは個人的に思う。単純なことが適当にすませることとイコールになってしまう…

アメリカ観察記断章。傍観的参加者として。

アメリカ観察記断章。前Homeland Security省長官にして現カリフォルニア大学総学長ジャネット・ナポリターノは来年度から5年に渡って毎年5%学費を上げていくという計画を提案した。これはかつて現カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンとカリフォルニア大…

アメリカ観察記断章。日常における軍関連のプレゼンス。

アメリカ観察記断章。アメリカにおいても軍隊は非日常だと思う。しかし軍に関するものは日常に深く入り込んでいる。たとえば11月11日はベテランズ・デー(退役軍人の日)で国民の祝日である。コミュニティのイベントに行けば、だいたい軍関係のブースが出て…

道と名(老子『老子』)

"The way is for ever nameless./...Only when it is cut are there names./ As soon as there are names/ One ought to know that it is time to stop." (Lao Tzu. Tao Te Ching. Book One, XXXII) 「道はいつまでも名を持たない/……名が生まれるのは切り離…

アメリカ観察記断章。可視化されるパトロンの存在。

アメリカ観察記断章。日本におけるクラシック音楽のコンサートは儀式のようなものだと思う。それはほとんど宗教めいており、クラオタという人種が集う厳粛な祭典のようなものだ。しかし南カリフォルニアのクラシック音楽のコンサートでは、それとはまったく…

アメリカ観察記断章。金持ちの寄付と文化のアウトリーチ。

アメリカ観察記断章。先月からコンサートに行きまくっている。ユロフスキ・LPO、スメタナトリオ、ハーゲン四重奏団、モザイク四重奏団、そして今日のビエロフラーヴェク・チェコフィル。安い当日券で入っているので、ワールドクラスの演奏だというのに、ここ…

アメリカ観察記断章。経済階級による縦割りのアメリカ、趣味による横割りの日本。

アメリカ観察記断章。アメリカで個は集団(的価値)に従属することを必ずしも要求されない。各々が好きなものを好きなように追求する余地が確保されているように思うし、他人と違うことをすることが体感できるかたちで報われる。たとえば自分のようにつねに…

アメリカ観察記断章。アメリカの学生の顔。

アメリカ観察記断章。アメリカの学生の顔には何か強い光がある。イケメンブサイクという美醜について言えば、カリフォルニアの学生たちはとりたてて見目麗しくない。女の子もあまり濃い化粧をしていないので、かなりのところまで素の輪郭が目に見える。そう…

アメリカ観察記断章。アメリカンドリームという神話の残存。

アメリカ観察記断章。先の表情が読めなくて怖いと言った学生はものすごく熱心な子で、毎回授業の後にいろいろ質問をしてくれるので、こちらとしても嬉しくて、できるかぎり誠実に返答しようと心がけている。彼女は中東からの移民第二世代で、彼女の家庭のな…

アメリカ観察記断章。明確な指標としての表情。

アメリカ観察記断章。先日授業のあと学生が書きかけのドラフトにコメントして欲しいというので「かまわないよ」と答えて読み始める。少しして学生がおもむろに、I'm scared because your face shows no expression and I can't read from your face what you…

アメリカ観察記断章。有償のサービスと無償の権利。

アメリカ観察記断章。エドワード・スノーデンがあるインタビューで「隠すものなどないから見せても構わない、というのは、権利を放棄するのと同じことだ。プライバシーは権利なのだから、我々はそれを正当化する必要などない。正当化しなければならないのは…

アメリカ観察記断章。トラブルを避ける術としての最低限のコミュニケーション。

アメリカ観察記断章。現代日本の都市空間で見ず知らずの人(そしてこのさき継続的かつ親密な関係を持つ可能性がほとんどない人)とコミュニケーションをとろうとする人は稀だろう。駅のホームだとかスーパーのレジだとか、そういう場所でアカの他人といきな…

アメリカ観察記断章。季節のリズムを決めるイベント。

アメリカ観察記断章。南カリフォルニアで買い物をしていると季節の移り変わりをつかむことが難しい。同じラインナップの野菜が一年中棚に並んでいるからだ。もちろんこれは今の日本でも同様かもしれない。しかし日本の場合、それでも、たとえば冬になると葉…

アメリカ観察記断章。和製英語の正しい英訳。

アメリカ観察記断章。英語を話していて微妙に困るのは、和製英語の正しい英訳が思いつかないときかもしれない。とはいえ和製英語であると気づけるのはまだいいほうで、長らく英語であると信じて疑わなかったものが実は和製英語なのだとわかって驚くことも少…