うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

特任講師観察記断章。日本語の体言止めの英語での濫用は誤用。

特任講師観察記断章。For example, onions, carrots, and potatoes. のようなセンテンスといえないものにこれまで何度遭遇したことだろうか。というよりも、なぜこれが中高の英語で直されていないのか、不思議でならない。さらに不思議なのは、だいたいこの…

翻訳語考。人名表記。Romanes をどう転記するか。

人名は本当に困る。George Romanes(1848‐94)という進化生物学者がいる。ダーウィン(1809‐82)より40歳近く若い Romanes は、晩年期のダーウィンのリサーチ・アシスタントを務めたばかりか、未出版の原稿を託されるほど、ダーウィンから信頼されていた。ハ…

20231021 Duolingo でのロシア語学習275日、または Duolingo で本当に外国語は身に付くのかについて

Duolingo でロシア語学習を始めて275日になったけれど、身についているような、身についていないような。 作業ゲー的な反復作業なのだ。脊髄反射的に4択のなかから正解を選ぶような設計になっている。いや、こう言ったほうが正確だろうか。意識的に記憶する…

救助本能の誤射としてのフレンドリーファイアー(ハドスン『ラプラタの博物学者』)

「さて、知的行動をとる人間もそうだが、本能的に行動する動物が、ときどき彼らなりの妄想や錯覚にとらわれて、ものごとを見誤り、まちがった刺激によって自分たちに不利な行動に駆り立てられることは、よく知られた事実である。群れや家族のものたちが、仲…

動物絶滅を後押しする近代の帝国(ハドソン『ラ・プラタの博物学者』)

「すべての家畜動物は、われわれが暗黒の時代とか未開の時代と習慣的にみなしているこれらの遠い時代から伝えられたもので、いっぽう近代のいわゆる人間の文明が、動物社会に対しては破壊そのものでしかないとは悲しいことである。地球全体でますます盛んな…

20231016 「大大名(スーパースター)の名宝―永青文庫×静岡県美の狩野派展」@静岡県立美術館を観る

20231016@静岡県立美術館「大大名(スーパースター)の名宝―永青文庫×静岡県美の狩野派展」 知り合いが内覧会への招待券をくれたので、展覧会開始前日に見てきた。この手のオープニングセレモニーには初めて足を運んだけれど、来ているのはリタイア層がほとん…

20231015 「ブルターニュの光と風」@静岡市美術館を観る

20231015@静岡市美術館 「光」と「風」だけカラーで、妙に気合の入ったレタリングになっているし、目玉として謳われている画家のなかにモネやゴーギャンが入っているから、「なんだよ、またフランス印象派展か」と思っていたら、力点は「ブルターニュ」のほ…

20231014 ジュリアン・ロスマン文絵、神崎朗子訳『自然界の解剖図鑑』(大和書房、2023)を読む

「若い鳥たちは上手にさえずることを夢見ながら最初の冬を過ごす(実際、眠っているあいだに「練習」していることが研究でわかっている)。」(171頁) 原語タイトルは Nautre Anatomy で、「自然界」という訳語は本書のカバーするトピックにうまくマッチし…

20231007@静岡芸術劇場 多田淳之介 演出・台本『伊豆の踊子』

20231007@静岡芸術劇場多田淳之介 演出・台本『伊豆の踊子』 いやこれは、『伊豆の踊子』ではなく、『The Dancing Girl of Izu』と呼んだ方がしっくりくるのではないか。川端康成の原作を裏切っているからでも、英語化されているからでもない。ここでは、わ…

借用の拒否の研究(モース『国民論』)

「有用なものでさえ借用を拒絶されるということも、観察の対象としなくてはならないのです。借用が起こったことの研究と同じくらい、借用が起こらなかったことの研究は興味深い。それというのも、この研究によってこそ、多くの事例において各文明の広がりの…

普遍言語の可能性(モース『国民論』)

「文明どうしは相互に出会い、相互い補完することができる。少なくともわたしたちの近代語彙のほぼ三分の一は、そしてまた、わたしたちの会話の大きな部分は、同一の格言やら言い回しやらで満ちあふれている。純粋理性・実践理性・人間的判断力の獲得物にほ…

時の海を漂ってやってきた動物を滅ぼす人間(ハドソン『ラ・プラタの博物学者』)

「昔、これらの動物たちには生命力が最高に輝いていた。そして彼らとともに地球にいた他のものたちが死に絶えたときも、彼らはより永続する価値があるとして残された。不死の花のように、彼らは時の海に漂ってわれわれの時代にまでやってきた。そして彼らの…

自分自身を贈ること(エマソン「ギフト」)

「あなたの一部だけが贈物でありうる。わたしのために血を流してくれなければならない。だから詩人は自身の詩を携えてくる。羊飼いは羊を。農夫は穀物を。鉱夫は原石を。水夫は珊瑚や貝殻を。画家は自身の絵画を。少女は自分で縫ったハンカチを。これは正し…

贈物を拒否することの暴力性(モース『贈与論』)

「与えるのを拒むこと、招待し忘れることは、受け取るのを拒むことと同様に、戦いを宣するに等しいことである。それは、連盟関係と一体性を拒むことなのだ。[Refuser de donner, négliger d'inviter, comme refuser de prendre, équivaut à déclarer la guer…