うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

彼方から引かれ、彼方に惹かれ、しかしいまここにある:自律性と他律性のあいだのZoom in Training

20200428@くものうえせかい演劇祭 「状態をコントロールすること」がこのトレーニングの「秘中の秘」であると宮城は先日述べていたけれど、今日の説明を聞いていると、彼のいう「コントロール」は、わたしたちが普通考えるそれとは大きく違っているのだろと…

すでに生まれている子どもに応答するために:「わたしたちは何も変わらなかった」とは言わないために

20200425@くものうえせかい演劇祭 15分近くにわたるワジディ・ムアワッドの朗読は、最初から最後まで、必ずやって来るはずのコロナウィルス後の世界のことをめぐる断章的省察であるにもかかわらず、そこにはつねに陰鬱な蔭がつきまとっている。 コロナウィル…

Zoom in Trainingの先にあるもの:状態のコントロール、または存在の演劇

20200424@くものうえせかい演劇祭 宮城の言うところの「秘中の秘」、このトレーニングの先にあるものは、「ムーブメントではなく、状態をコントロールすること」にあるという。 (1)一方において、まず丹田に重心を集め、それを安定化させる。しかし他方に…

自撮りの技術とそれ以上のセルフ・プロデュース力:バーチャル立ち稽古再視聴

20200422@くものうえせかい演劇祭 バーチャル立ち稽古をなんだかんだで仕事のお供にしながら視聴しているのだけれど、見るほどに、個々の俳優にかなり特殊な演出力を要求するメディアだという思いが募る。 特殊な演出力と大げさに書いたけれど、平たく言えば…

身体の不自然化の帰結はどこに?:Zoom in Training再視聴

20200418@くものうえせかい演劇祭 Zoom in Trainingはもう見ないだろうと言った手前、なんでまた見たのだと自らツッコミを入れたくなるところだが、激しい雨が降っていてとくにやることもなかったのでと答えるほかない。宮城による解説を初めて見たが、トレ…

翻訳語考。「連帯」のいかがわしい響き。

翻訳語考。「連帯」のいかがわしい響き。「連帯」という単語になにか引っかかりを覚えていて、なぜなのだろうかと思っていたのだけれど、その理由のひとつは日常的な用法というか自分の記憶のなかにある実際の用法がきわめて抑圧的な響きを持っているからで…

圧縮の解凍による饒舌な翻訳的再創造:岡田利規の『能・狂言』(池澤夏樹=個人編集『日本文学全集』10巻、河出書房新社、2016年)

岡田利規訳の能・狂言はもう猛烈に面白い。言葉の疾走感が違う。 「高密度に圧縮されてる能の言葉を現代ヴァージョンで解凍する、勢いとヴァイヴレーションで押し切る狂言の言葉の質を現代のそれに置換する。上演のためのテキストとして」とは岡田の言葉であ…

表出の強度としての歌心:ヘルマン・シェルヘンの独善的な精神の気高さ

おまえがもっとも私淑する指揮者をひとり挙げてみろと問われたら、間髪入れず「ヘルマン・シェルヘン」と答える。 とはいえ、シェルヘンの録音すべてに傾倒しているわけではない。シェルヘンの録音はコンプリートに近いほど所持しているし、商業的に出回って…

Zoomのスピーカー・ビュー・モードでやるバーチャル演劇の構図の問題性

20200412@バーチャル立ち稽古『おちょこの傘持つメアリー・ポピンズ』、くものうえ演劇祭 Zoomのスピーカー・ビュー・モードだと、はからずも、ふたりの対話が古典的ハリウッド映画の構図――対話相手の視点からの発話者の画が交互に入れ替わる――のはちょっと…

Zoom in Training:「体重をできるだけ小さな球としてイメージする」

20200411@くものうえ演劇祭 Zoom in Trainingは見世物として面白いものでもないが――まあ、そもそも見世物として意識されているものではないから、それは当然ではあるのだけれど――たまに入る宮城さんの解説が面白い。 「できるだけ小さな球として体重を体の…

特任講師観察記断章。けだるげな朗読と悪くない英語の発音。

特任講師観察記断章。ひとつ講義サンプルを作って気をよくしたのか、ざっと2回目の講義スクリプトを書き出し、またその一部を録音してみたところ、やはり声はあまりにやる気なさそうで、あまりにもけだるげな朗読になったけれども、自分の英語の発音は、まあ…

特任講師観察記断章。やる気なさそうな声。

特任講師観察記断章。丁寧に書き込んだ講義スクリプトを、やる気なさげに読んで録音したら、思った以上にやる気なさそうな声で撮れてしまった音声を、パワーポイントと合成してみるものの、何度聞いてもやはりものすごくやる気なさそうな声だ。自分の声を聞…

翻訳語考。「他者からのウィルスの獲得」?

このNYTの記事によると、アメリカ疾病管理予防センター(the Center for Disease Control and Prevention)はマスク使用についてのガイドラインの修正を検討中らしい。非感染者がマスクによって感染を防ぐことはできないけれど、無症状の感染者が知らず知ら…

特任講師観察記断章。失敗する「社会距離戦略」。

特任講師観察記断章。「社会距離戦略」が生協食堂でひっそりと展開されている。4人掛けのテーブルから椅子が2脚取り払われ、残りの椅子も真向かいではなく対角線上に、互い違いに配置されている。にもかかわらず、気づいたかぎりでは、どこにもなぜそんなこ…

スタイリッシュな瞑想性:マイケル・ティルソン・トーマスのアメリカ西海岸の音楽

マイケル・ティルソン・トーマスの録音を最近よく聞いている。きっかけはソニーから再発されたイギリス室内管と1980年前後に録音したベートーヴェンの交響曲全集だ。古楽器的なアプローチというわけではない。演奏スタイルの流行で言えば、取り残された部類…