うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

宮城聡演出、レオノーラ・ミラノ『顕れ』

20190127 @静岡芸術劇場 神話的構造 アフリカにおける奴隷貿易という負の歴史をめぐる物語ではあるが、劇自体は神話的構造を持っている。すべての生命の母であるイニイエのもとに、輪廻のサイクルを繰り返す魂であるマイブイエと、輪廻のサイクルから切り離…

学び取ったものを学びなおすために(ブレヒト「ぼくの学んだ場所」)

「ぼく自身がどこで学んだかについて、少なくとも思い出せる限り書き出してみよう。とはいえ、ぼくがこれを書き記すのは、他の人たちにこれから何かをえてもらうためばかりではない。ぼく自身いままでのことを省察してみたいとも思うからである。自分の学び…

芸術と感動(ブレヒト「芸術、あるいは政治?」)

「芸術そのものが人間の運命に揺り動かされないなら、どうして芸術が人間を感動させうるか? ぼく自身が人間の苦しみにたいして無感覚でいるなら、ぼくが書くということに、どうして人びとは胸をひらきえよう? その苦しみを抜けだす道をかれらのために発見…

特任講師観察記断章。「お世話になっております」

特任講師観察記断章。授業日程についての学生からの質問メールの一行目に「お世話になっております」と書いてあるのを見ていろいろと考えてしまう。頭に浮かんだのは「敬語が使えない現代の学生」というありきたりの批判ではない。現代日本語における定型表…

定義が見えないなかで物語る(『大江健三郎 柄谷行人 全対話』)

「大江 しかし、定義がだれの目にもはっきり見えてくる時代は、そのジャンルが終わる時じゃないですか……いつも前を見て、訳の分からない方向へ向かって書いていく、それが小説です。認識してもいないものをなぜ書けるのかというと、物語るという技術があるた…

真が美ではない時代に(ブレヒト「新しい批評への要求」)

「美的な輝きをもって形づくられたものは虚偽でしかありえない、という状況のもとで、ぼくらは生活している。真実が美として感得されえない以上、もはや美が真実としてぼくらのまえに現れるわけがない。」(ブレヒト「新しい批評への要求」)

土台を侵蝕させる(ブレヒト「オペラ『マハゴニー』への注釈」)

「ほんとうに新しくする作業は、土台を侵蝕する。」(ブレヒト「オペラ『マハゴニー』への注釈」)

誰かに向けて計算して書く(ブレヒト「真実を書くさいの五つの困難」)

「真実は、その人がそれでなにかをはじめられるように、ぜひともだれかにむかって書かれねばならない。真実の認識は、書き手と読み手に共同の作業だからである。よいことを言うためには、ものごとを上手に聞くことができなければならず、またよいことを聞か…

「奇妙な相貌をとって目覚めてくる日々」(パヴェーゼ「自殺」)

「ぼくの住んでいる都市が、通り過ぎる人や車、木立、何もかもが、朝方、鏡を覗きこんで≪そこにいるのは誰?≫とついたずねてしまう瞬間のように、いつもと同じでありながら、それとは認めがたい、奇妙な相貌をとって目覚めてくる日々がある。ぼくには、それ…

翻訳語考。長い日本語の文を書くために。

翻訳語考。長い日本語の文を書くにはどうすればいいか。 西洋語にはコロンやセミコロンがあり、ダッシュがある。西洋語のほうが区切りのギアが細かい。プルーストの文章は長い長いと言われるけれど、あの長文はコロンやセミコロンによって可能になっている部…

知られていないもの……(ル・グウィン『闇の左手』)

"The unknown...the unforetold, the unproven, that is what life is based on. Ignorance is the ground of thought. Unproof is the ground of action...The only thing that makes life possible is permanent, intolerable uncertainty: not knowing wh…