2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧
翻訳語考。a secular notion of freedomという英語の言い回しに文法的な難所はない。secularという形容詞はnotionという名詞を修飾しており、不定冠詞 a は notion と呼応している。of 以下は notion の修飾である。 しかしこれを正確に日本語にするのは案外…
20220505@駿府城公園 4カ月近く経って何をいまさらという感じはするけれど、書き留めておく。 『ギルガメシュ叙事詩』はアンチクライマックスな物語だ。前半は冒険活劇。シュメール都市国家ウルクの王ギルガメシュが主人公。野人エンキドゥとの格闘を経て固…
「貧しい連中を罰する神さまがいるとしたら、よっぽど変わり者の神さまじゃないか?」(チャペック『白い病』10頁)
20220827@静岡県立美術館 県立美術館は家のそばにあるせいで、「行こうと思えばいつでも行けるさ」という気になってついつい後回しにしていまい、気づいたらもう終わっていたことが一度ならずあるのだけれど、今回はぎりぎり思い出して、夜間開館日だったの…
ホッブズのあの有名なフレーズ「万人の万人にたいする闘争」だけれど、この訳語でいいのだろうか。ラテン語だと bellum omnium contra omnes。ラテン語は格変化するので、所有格 omnium と 対格 omnes で語尾が異なっているが*1、元の単語は omnis。ここでは…
インゴ・メッツマッハーにとって音楽はなによりも現象であり、出来事なのかもしれない。音があってその後に音楽が来るのではない。音がつねにすでに音楽なのだ。 こう言ってみてもい。メッツマッハーの考える「音楽」は、ノイズやカオスやサイレンスを含めて…
「わたしたちの誰もが知っているように、政治とは、社会のなかの純粋に利己主義的な要素が、利他的な熱望ともっとも錯綜した結合をなす領域である。しかし、経験のある政治家なら誰でも知っているように、偉大な政治運動はすべて、大きな問題めぐって闘われ…
20220815@静岡市美術館 「刀剣✕浮世絵」と謳うにはずいぶん刀剣が少ないじゃないかと思いきや、最後のセクションにまとまって展示されていて、8割近くの展示を埋める戦記物のシーンを図像化した江戸中期から後期にかけての錦絵とのバランスはギリギリ取れて…
セミヨン・ビシュコフの音楽のふくよかさは、なかなかありそうでない。彼の鳴らす音は分厚い。厚手の生地に厚手の裏地がついている感じだが、暑苦しくはない。向こうが透けて見えるような軽快さは皆無だが、かといって不透明に濁っているわけではない。音は…
「わたしたちは本書をとおして、3つの原初的自由にたびたび言及してきた . . . 移動の自由、不服従の自由、社会関係を築いたり変えたりする自由である。またわたしたちは、英語の free がどのようして究極的にはドイツ語の「友」を意味する語に由来するのか…
「「官僚制」という言葉自体が、機械的な愚鈍さを喚起する。しかし、非人称的なシステムがその起源において愚かであった、ないしは、必然的に愚かである、と信じる理由は何もない . . . 田舎のコミュニティで暮らした経験があったり、大きな街の自治会や教区…
「 . . . 君主制はおそらく、わたしたちが知っている著名な統治制度のなかで、子どもが決定的なプレイヤーとなる唯一のものだろう。というのも、すべては王朝の家系を途絶えさせない君主の能力にかかっているからだ。どのような体制でも死者崇拝はありえる。…
「本当にラディカルな説明は、ひょっとすると、間にある時と場という角度から、人間の歴史を語り直すのかもしれない。[A truly radical account, perhaps, would retell human history from the perspective of the times and places in between.]」(グレー…
特任講師観察記。本務校の採点業務は9割は片付いた。追試対応をしなければならない学生がまだいるけれど、大筋では終わったといっていい。しかし、採点をやるほどに、何のための採点なのかという気がしてくる。 評価は必要だ。いや、評価というよりも、批評…
「どのような種類のものであれ、民主的な制度や機関が遠い過去にあったことを主張するとなると、学者たちは、曖昧さのない反駁不可能な証拠を求める傾向にある。驚かされるのは、トップダウン型の権威構造となると、学者たちがそれほど厳密な証拠を求めたり…