うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2022-08-10から1日間の記事一覧

セミヨン・ビシュコフの時代錯誤的にふくよかな音楽:両立可能な厚さと軽やかさ

セミヨン・ビシュコフの音楽のふくよかさは、なかなかありそうでない。彼の鳴らす音は分厚い。厚手の生地に厚手の裏地がついている感じだが、暑苦しくはない。向こうが透けて見えるような軽快さは皆無だが、かといって不透明に濁っているわけではない。音は…

自由、友、母に帰る(グレーバー&ウェングロウ『すべてのはじまり』)

「わたしたちは本書をとおして、3つの原初的自由にたびたび言及してきた . . . 移動の自由、不服従の自由、社会関係を築いたり変えたりする自由である。またわたしたちは、英語の free がどのようして究極的にはドイツ語の「友」を意味する語に由来するのか…

官僚制を怪物にしてしまう力(グレーバー&ウェングロウ『すべてのはじまり』)

「「官僚制」という言葉自体が、機械的な愚鈍さを喚起する。しかし、非人称的なシステムがその起源において愚かであった、ないしは、必然的に愚かである、と信じる理由は何もない . . . 田舎のコミュニティで暮らした経験があったり、大きな街の自治会や教区…

君主制のおける子どもの政治的重要性(グレーバー&ウェングロウ『すべてのはじまり』)

「 . . . 君主制はおそらく、わたしたちが知っている著名な統治制度のなかで、子どもが決定的なプレイヤーとなる唯一のものだろう。というのも、すべては王朝の家系を途絶えさせない君主の能力にかかっているからだ。どのような体制でも死者崇拝はありえる。…

中間から語り直す(グレーバー&ウェングロウ『すべてのはじまり』)

「本当にラディカルな説明は、ひょっとすると、間にある時と場という角度から、人間の歴史を語り直すのかもしれない。[A truly radical account, perhaps, would retell human history from the perspective of the times and places in between.]」(グレー…