うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

カイルベルトの職人芸の人間性:ドイツ・ローカルな指揮者

ヨーゼフ・カイルベルトは洗練をあえて退けるようなことをする。音が割れることもいとわず金管に咆哮させる。終結部では、造形が崩れることもいとわずアッチェレランドをかける。まるで綺麗にまとめることを生理的に拒むかのように。 しかし、この熱血な忘我…

まねること、学ぶこと、考えること(ル=グウィン『オールウェイズ・カミング・ホーム』)

"As a kitten does what all other kittens do, so a child wants to do what other children do, with a wanting that is as powerful as it is mindless. Since we human beings have to learn what we do, we have to start that way, but human mindfuln…

マーラー交響曲5番4楽章アダージェットの映像化の可能性

もはやマーラーの交響曲第5番4楽章アダージェットをヴィスコンティの『ヴェニスに死す』と切り離してイメージすることができないこと、ゴンドラと水と甘美な死というイマージュが否応なしに喚起されてしまうことを引き受けた上で、なにかべつの美の可能性を…

嘆きの歌の慰め(エウリピデス『トロイアの女』)

「幸薄き者の雅びは/調べなさぬ悲運の嘆きのみ。」(エウリピデス『トロイアの女』120‐21行) 「苦しみになやむときは涙こそこよなき慰め、悩みを歌い、苦しみを語れば、おのずと心は安まるもの。」(エウリピデス『トロイアの女』608‐9行)

モンポウの間:中古CD屋めぐり

中古CD屋めぐりは大学時代の日課だったけれど、留学してからはずっと遠ざかっていた。 最近また静岡の街中にあるなんということはない中古CD屋に週1ぐらいで通うようになった。 思わぬ掘り出し物がたまにある。 先日見つけたのは、モンポウのピアノ曲集。50…

特任講師観察記断章。Equalでdifferent。

特任講師観察記断章。Equalでdifferent。「民主主義は、ある意味、矛盾に立脚するシステムです。民主主義は、わたしたちに、equalでありながら、diverseでdifferentであることを求めます。権利のうえではequalでなければならない。たとえばある人は5票持って…

『三文オペラ』における群衆の可能性

「ピーチャム おれは気づいたんだ、この地上の金持ちどもは、貧困を生み出すことはできるくせに、貧困を直視することはできないってな . . . あいつら、腹が減ってぶっ倒れる人間を目撃して、知らんぷりをするってのは無理なんだ。だから、どうせぶっ倒れる…

戦略的ハッピーエンドの演出的なアンハッピーエンド:ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ演出『野外劇 三文オペラ』

20210425@駿府城公園 東御門前広場 特設会場 ジョルジオ・バルベリオ・コルセッティ演出『野外劇 三文オペラ』 4月末の18時は夜というにはまだ明るい。かといって昼の光が残っているわけでもない。中途半端な狭間の時間、ただっぴろい灰色の広場の中央奥に、…