中古CD屋めぐりは大学時代の日課だったけれど、留学してからはずっと遠ざかっていた。
最近また静岡の街中にあるなんということはない中古CD屋に週1ぐらいで通うようになった。
思わぬ掘り出し物がたまにある。
先日見つけたのは、モンポウのピアノ曲集。50年代の録音で、90年代初頭にEMIから復刻されたもの。最初に買った人の仕業だと思うけれど、わざわざケース裏側を一度こじあけて、「27/May 1992」と刻印されたお手製のテープが貼ってある。昔だったらこのような前の持ち主の痕跡のある中古品はあえて買わなかったのだけれど、最近は、誰かに記憶されることもなく消えていくはずだったかもしれない個人史の引き継ぎなのかなという気もしている。
モンポウは作曲者本人によるステレオ演奏がBrilliantから出ていて、基本的にそれさえあればもう十分という感じもあるけれど、のちにモンポウと結婚することになるカルメン・ブラーボによるこの演奏は、作曲者の自作自演よりもうすこしウェットで、抒情的で、湿った空気のなかで聞くにはちょうどよい感じ。
モンポウの曲は、ポスト・ドビュッシー的な響きもさることながら、そこかしこにふと開ける間がなんとも心地よい。