うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

立派すぎる論文(ダーウィンからベイツへの手紙)

「あなたの論文は、情熱を欠いた博物学者のおおかたから高く評価されるには、あまりにも立派すぎるのです。[Your paper is too good to be largely appreciated by the mob of naturalists without souls]」(ダーウィンからベイツへの手紙、1862年11月20日 …

20230915 糸で描く物語——刺繍と、絵と、ファッションと。@静岡県立美術館

20230915 糸で描く物語——刺繍と、絵と、ファッションと。@静岡県立美術館 焦点の定まらない展覧会というのが正直な感想。「糸で描く物語」というタイトルと、告知ビラやポスターから、刺繍やタペストリーによる具象的な作品なのかと思いきや、そういうわけ…

共食の倫理(阿部謹也『中世の星の下で』)

「仲間団体とは何よりもまず飲食を共にし共に歌う団体でなければならなかった。近代人は飲食をともすれば軽視しがちであるが、中世においては仲間団体である限りきまった日時に皆が揃って食べ、かつ飲んだのであり、そこにおける規律、約束が対人関係の倫理…

「旅は生命をかけた行為」(阿部謹也『中世の星の下で』)

「旅は本来定住生活のなかで澱んできた身辺を洗い直し、目に見えない絆で結ばれている人間と人間の関係を再確認するための修行なのであって、日本だけではなく、ヨーロッパにおいても旅は生命をかけた行為なのである。」(阿部謹也『中世の星の下で』14頁)

「美しい空虚な気持」(川端康成「伊豆の踊子」)

「私はどんなに親切にされても、それを大変自然に受け入れられるような美しい空虚な気持だった。」(川端康成「伊豆の踊子」)

20230911 村上春樹『街とその不確かな壁』を読む。

村上春樹には2系統の物語があるような気がする。一方に、ひじょうに幻想的な、現実とはかけ離れた空想と夢想の世界で展開される物語があり、他方に、物語としては依然として幻想的でありながら、物語世界自体はわたしたちの現実世界と地続きであるような物語…