うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

美術メモ

20260529「密やかな美 小村雪岱のすべて」@千葉市美術館を観る。

大正から昭和にかけて挿絵画家として活躍し、映画や演劇でも大きな役割を果たした小村雪岱は、「挿絵のモデルー個性なき女性を描いて」という文章のなかで、彼の描く女性が無個性だという批判に応えて、次のように述べている。「私は個性のない表情のなかに…

20260520「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照」@東京ステーションギャラリーを観る。

カール・ヴァルザーのことは何も知らずに観にいって、それなりに愉しめた展覧会。ビラのビジュアルに用いられている、本を手に持った淑女の絵は、肩透かしと言いたくなるほどに小さく――大きな肖像画かと思いきや、小さく控え目な習作――、その点では、羊頭狗…

20260520 「トワイライト、新版画―小林清親から川瀬巴水まで」@三菱一号館美術館を観る。

浮世絵とはどのように鑑賞すべきものなのだろうか。どこまでが彫りや刷りの功績になるのだろうか。浮世絵は集団制作と見なすべきなのか個人の創意の産物と捉えてよいのだろうか。そのあたりの機微がわからない。それに、浮世絵は、複製技術によるワン・ノブ…

20260419「拡大するシュルレアリスムーー視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへーー」@東京オペラシティ アートギャラリーを観る。

近代の西洋芸術は、大雑把に言えば、テンプレ遵守の古典主義からの解放=自由だ。「絵画とはこうあるべき」という固定観念からの脱却。それはたとえば、写実(見えるように描く)や写生(戸外での制作)という方向性であり、不変=普遍化された理想に対抗す…

20260418「開館85周年記念 特別展 光琳派 国宝「燕子花図」と尾形光琳のフォロワーたち」@根津美術館を観る。

尾形光琳の「燕子花図」では、花と葉はすべて、写実ではなく、〈かたち〉に抽象化されている。そのはずだが、すべてが異なっている。パターンに落とし込まれていながら、そのひとつひとつが、具体的で特異なものになっているようなのだ。 全体が作り出す雰囲…

20260325「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」@東京都美術館を観る。

開館100周年記念の展覧会がなぜスウェーデンの19世紀末の絵画なのかは最後まで腑に落ちなかったけれど、古典主義的な絵画を打ち破る原動力となったのがフランス遊学者たちであったこと—―戸外での写生という方法論、農村の日常の主題化――、そして、そのような…

20260219「大西茂 写真と絵画」@東京ステーション・ギャラリーを観る。

大西茂の写真は被写体に依存しない。というよりも、彼は被写体の真実というようなものを目指してシャッターを切ったわけではないのだろう。技術的なことがわからないので、推測するしかない部分もあるけれど、ここには間違いなく、一般の目に映るものではな…

20260319 「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」@パナソニック汐留美術館を観る。

民藝から戦後建築まで、宮沢賢治から竹久夢二まで、さまざまな分野を横断的に並置することで、日本近代における「美しいユートピア」をめぐる試みを浮かび上がらせようという野心的な展覧会。 panasonic.co.jp パナソニック汐留美術館は初めて来たけれど、JR…

20260121「描く人、安彦良和」@渋谷区立松涛美術館を観る。

miru .安彦良和を漫画家としてきちんと認識したのは『王道の狗』(1998‐2000)をほぼリアルタイムで——しかし単行本で——読んだときだと思う。『アリオン』(1979‐84)や『クルドの星』(1986‐1987)は実家にあったので、中高生ぐらいで読んではいたけれど、安…

20260118「小林徳三郎」@東京ステーションギャラリーを観る。

小林徳三郎の絵には不健康ではない翳りや憂いがある。湿り気を帯びた色彩の基調となるのは緑や茶であり、雰囲気は重い。しかし、線は丸みを帯びた曲線で、どこかユーモラス。大笑いではないし、微笑みでもない。あえて言えば、泣き笑いのよう。そこはかとな…

20260117「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」@渋谷ヒカリエ・ホールを観る。

渋谷の「ヒカリエ」8階のイベントホールで開催中の展覧会に終了前日となる土曜日に行ったけれど、予想どおりの混雑。ネットで事前にチケットを買っておいたけれど、それでも会場に入るまでに15分か20分ぐらいは待つ羽目になった。それだけの価値があるものだ…

20251212「モーリス・ユトリロ展」@SOMPO美術館を観る。

名前は知っているけれど、作品(または作風)となると思い浮かばないという画家は、いるようでいない気がする。その意味で、モーリス・ユトリロは例外的なのかもしれない。というよりも、「近代フランスの画家」ということぐらいは当然知識としては頭に入っ…

20251126「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」@東京国立博物館を観る。

平日午後の中途半端な時間だというのに、建物の外で入場まで10分待ちということに驚く。今週末で会期終了だからだろうか。しかし、中に入ってやっと気がついたのだけれど、この「特別展」の会場は本館の一室だけで、展示品は7体の仏像のみ。すべてが国宝指定…

20251120「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」@東京都美術館を観る。

フィンセント・ファン・ゴッホといえば、みずから耳を切り落とし、ピストル自殺した狂気の画家というのがステレオタイプ的な理解だと思っていたけれど、もしかすると、そのイメージはもう古いのかもしれない。 この展覧会でクローズアップされるのは、まさに…

20251112「円山応挙——革新者から巨匠へ」@三井記念美術館を観る。

円山応挙という名前はもちろん知っているけれど、代表作を挙げろと言われたら困ってしまうところだ。書き散らしたような素描から、素人仕事の蒔絵まで、精密な写生から、ジャンル的なクリシェまで、かわいらしい動物から、凛とした自然まで、応挙の仕事を幅…

20251108 「柚木沙弥郎 永遠のいま」@東京オペラシティ アートギャラリーを観る。

民藝はコンテンツとして強い。ということを如実に感じさせられた展覧会だった。この美術館(というか、ギャラリー?)に来るのは2回目でしかないけれど、客層の違いは目に見えてわかるし、ギャラショップの混み方も桁違い。特別展のほうの人出とは裏腹に、常…

20251029 「インド更紗 世界をめぐる物語」@東京ステーション・ギャラリーを観る。

渋い展覧会だが、布地を見る目が変わる。ヨーロッパ起源の草花模様だと思っていたものが実はインド更紗職人によるデザインに端を発するものであったことが見えてくる。ウィリアム・モリスのデザインにしてもそうだ。まさに更紗は史上初の「グローバル・プロ…

20251011「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s」@松涛美術館を観る。

「私は書を書くのではなくて鷹を書くのであります」井上有一は大岡昇平の短編「鷹」によせた字についてそのように述べているけれど、たしかに、彼が生涯試みたのは、シニフィアン(記号表現)を書くことではなく、シニフィエ(意味内容)を表象することだっ…

20250921 横浜美術館のコレクション展を観る。

せっかくみなとみらいまで来たのだからと、すこし周りをぶらついてみる。みなとみらいに来たのは初めてではないけれど、駅直結で複数のオフィスビル、ホテル、ショッピングモール、コンサートホールががシームレスにつながっていることをここまで意識したの…

20250920 「難波田龍起」@東京オペラシティギャラリーを観る。

先日、ヒルマ・アフ・クリント展を見にいった東京国立近代美術館の常設展だったか企画展だったか忘れたけれど、そこで難波田龍起の絵を初めてみて、その澄み切った抽象性に感銘を受けていたので、この展覧会のビラを近所の図書館で見かけてから、ずっと行こ…

20250913 「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」@国立西洋美術館を観る。

20250913 「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」@国立西洋美術館 上野の美術館は学生のころよく行っていたし、国立西洋美術館の常設展(松方コレクション)は高階秀爾や若桑みどりなどの西洋美術の概説書で学んだこと…

20250806「漫画家生活30周年 こうの史代展 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」@佐倉市美術館を観る。

とくに佐倉市に所縁があるわけでもなさそうなのになぜここでと思ったが、通勤経路の途中にある美術館なので行ってみた。金沢21世紀美術館がスタートで、その次がこうの史代が在住の福知山市佐藤太清記念美術館、そして3番目の巡回地となるのがここ佐倉市美術…

20250801「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」@静岡市美術館を観る。

展覧会を見終わっても芸術家の正体がまるでつかめないというのは、めずらしい体験だった。 shizubi.jp クレーといえばふたつのことが自動的に思い浮かぶ。ひとつはヴァルター・ベンヤミンのいわゆる「歴史哲学テーゼ」で言及される「新しい天使」。それから…

20250720 「岡崎乾二郎 而今而後 Time Unfolding Here」@東京都美術館を観る。

岡崎乾二郎は、名前こそ何となく幾度となく耳にしながら、実際の作品は見たことがない作家のひとりだった。というわけで、微妙にアクセスの悪い東京都現代美術館に会期終了直前に足を運ぶ。 会場に置かれてた図録の文章によれば、造形作家の岡崎乾二郎は、文…

20250702 ミロ展@東京都美術館を観る。

20250702 ミロ展@東京都美術館 ジョアン・ミロの絵はわりと思い浮かべることができる。単色の背景に、象形文字のような記号が細い線を広げている。くぐもった暗いカラーと、鮮やだがくすみのあるカラーがコントラストをなしている。線が空間に広がっていく。…

20250611 「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」@東京ステーションギャラリーを観る。

20250611@「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」@東京ステーションギャラリー 「北欧デザイン」というくらいの雑な情報で立ち寄ったのだけれど、タピオ・ヴィルカラが長年にわたってイッタラのデザイナーを務めていたことは知らなかったし(イッタラというブラ…

20250610 ヒルマ・アフ・クリント展@東京国立近代美術館を観る。

20250610 ヒルマ・アフ・クリント展@東京国立近代美術館 アフ・クリントの絵はニューヨークのグッゲンハイム美術館で見たことがある。学会でアメリカ東海岸に行ったさい、せっかくだからとさしたる目的もなくNYに行き、時間があまりなかったので、MoMAやメ…

20250501 「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」@国立歴史民俗博物館を観る。

20250501 「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」@国立歴史民俗博物館 勤務地から2駅のところにある国立歴史民俗博物館に行ってきた。とあるツテで招待券を入手した特別展の会期は6日まで。というわけで、仕事の合間をぬって、急ぎ足で見てきた…

20250404 異端の奇才ビアズリー展@三菱一号館美術館を観る。

20250404 異端の奇才ビアズリー展@三菱一号館美術館 ビアズリーの絵には歪みがある。しかし、それは技術不足によるものではなく、表現として意図的に導入されたものであるようだ。人物の身体は薄く引き伸ばされる。衣服は独自の存在であるかのように舞い広…

20250319 「DIC川村記念美術館 1990–2025ーー作品、建築、自然」@DIC川村記念美術館を観る。

20250319@DIC川村記念美術館「DIC川村記念美術館 1990–2025ーー作品、建築、自然」 もうすぐ閉館してしまうというDIC川村記念美術館が引っ越し先からわりと近く、駅から無料バスも出ているというので、行ってきた。京成佐倉駅からバスに揺られること約30分。…