うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

20250501 「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」@国立歴史民俗博物館を観る。

20250501 「時代を映す錦絵ー浮世絵師が描いた幕末・明治ー」@国立歴史民俗博物館

勤務地から2駅のところにある国立歴史民俗博物館に行ってきた。とあるツテで招待券を入手した特別展の会期は6日まで。というわけで、仕事の合間をぬって、急ぎ足で見てきた。

www.rekihaku.ac.jp

歴博(と略されるらしい)の最寄り駅である京成佐倉駅は、成田空港手前の駅ですべての種類の急行が停まるにもかかわらず、駅としては決して大きくないし、駅前もわびしい。コンビニと弁当屋があるぐらいで、にぎわっていない。

歴博城址に建てられており、小高い丘の上にある(そういえば、静岡県庁もかつての駿府城に隣接しているし、山形県立博物館も城址公園の内部にあったような)。というわけで、歩いて15分ぐらいとはいえ、高低差は意外とある。

錦絵は多色刷り浮世絵と言ってよいのだろうか。キャプションによれば、江戸時代、同時代の出来事を直接的なかたちで描くことは禁じられており、その結果、高度にコード化した表現方法が発達したという。つまり、過去の類似の事例になぞらえるかたちで、同時代を諷刺するという婉曲的なやり方がデフォルトであったとのこと。当時のビジュアル・リテラシーはかなり高かったのだろうか。

カラー印刷の錦絵は、今日におけるニュース写真が果たしたような役割を担っていたのかもしれないが、その一方で、錦絵はつねに一コマ漫画的でもある。一枚のなかに物語があり、そのシーンにいたるまでの時間が圧縮して閉じ込められている。だから、静止画であるにもかかわらず、動画的なニュアンスがある。その意味で、ニュース写真というより、ニュース映像と比べたほうが、的を射ているのかもしれない。

こう言ってみてもよい。錦絵は、フォトショップ加工された、現実にはありえないベストショットであり、現実そのままを写し取っているのではなく、現実の真実を表象するために、複数のアングルやフレームをひとつに合成しているのだ、と。

だから、そこにはデフォルメがあるばかりではない。目には見えない異界の存在——妖怪たち―—が登場し、動物たちは擬人化される。人でさえトランスフォームする。首から下は普通なのに、顔部分が桶になっていたり、楕円形に文字が書き込まれていたりする。

それにしても、錦絵は「絵」と呼んでよいのだろうか。というのも、今回の展示物では、文字情報のない錦絵はほとんどなかった(というか、まったくなかった?)ように思うから。絵のタイトルが絵のなかに書き入れられているばかりか、描かれている人物のとなりには名札のようなものが付いている。何行にもわたるキャプションも入っている。その意味で、錦絵は、文字情報あってのものであるようにも見える。もちろん、純粋に美術品として見るのなら、文字部分は無視して差し支えないのだろうけれど、そうすることは、錦絵を歴史的文脈から引きはがすことにもなる。

とはいえ、この特別展を見てもよくわからなかったのは、当時の人々がこれらの錦絵をどのように活用したのかという点。コレラの流行を取り扱ったものは、お守りのようなものだったのかと思うけれど、江戸幕府を風刺したもの—―当時相当な数が売れたもの――は、どのような人々が、どのような機会に見たのだろう。そして、このような錦絵は、もし購入者によってコレクション的に保存されたとしたら、どのようにとっておかれたのだろうか。

というわけで、こうして錦絵をたくさん見ていくと、日本の漫画というのは、日本におけるビジュアル・カルチャーの正統な継承者なのだろうと思わされる。その一方で、現代の読者であるわたしたちは、過去の錦絵の閲覧者と同じぐらい、ビジュアル・リテラシーに長けているのだろうかという気もしてくる。

 

時間がなかったので、常設展は、見るというよりは歩くかたちになってしまったけれど、歴史資料集で見たことがあるようなもの満載で、1分の1スケールと思しき模型があちこちにあり、日本史をかなりリアルに体験できるようになっている。

 

常設展のみだと入館料は600円、特別展込みでも1000円というのは、上野の東京国立博物館の常設展は1000円で、特別展のチケットとなると2000円前後になることを思うと、かなり良心的(まあ、佐倉まで行く電車代を思うと――JRを使おうと、京成を使おうと、東京から行こうとすれば、往復で1000円ぐらいはかかるだろう――、トータルで考えれば、そこまで安いとも言えないようには思うけれど)。

連休の谷間とはいえ、ゴールデンウィークだからか、平日にしては随分にぎわっている。しかし、観覧者の年齢層は高め。リタイアしたシニア層がボリュームゾーンなのかもしれない(これは平日だからかもしれないけれど)。

 

館内のレストランで「古代ハヤシライス」を食べたけれど、コメが古代米(なのか?)と言うこと以外はいたって普通。なので、これで1000円オーバーは、ちょっと割高な気はするところ。