うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

20230831 ボトムアップ型の社会主義のために何が必要なのか。

一九世紀末と二〇世紀初頭は福祉国家の創世期であり、福祉国家の鍵となる制度は、まさに、その大部分が、国家とはまったく無縁の相互扶助集団によって創り出され、その後、国家や政党がそれらを徐々に取り込んでいったのだった。右翼も左翼も、大半の知識人…

翻訳語考。「意図的」であることと「誤訳」であることの差。

日本政府の「意図的な誤訳」とまで言い切っていいのだろうか。「意図的」というのには同意する。しかし「誤訳」とまで言えるのかどうか。 原文は「We support the IAEA’s independent review to ensure that the discharge of Advanced Liquid Processing Sy…

翻訳語考。地名の問題。

翻訳語考。地名の問題。1914年に書かれた英語の文献に出てくる「Kieff」をどのように日本語の音に転写するべきだろうか。 キリル文字をラテン文字(英語などでおなじみのいわゆる「アルファベット」)に転写する明確なシステムが導入された最初の例は、1899…

翻訳語考。漢字をどのくらい使うか、または外国語起源だと知らなかった言葉の発見(「カンパ」はロシア語からの借用語)

翻訳語考。字面を黒く詰める(漢字に変換するか)、白く伸ばす(ひらがなカタカナをつかうか)かは、結局のところ、翻訳者の恣意的な判断にゆだねられるものだろう。 たしかに、英語史的には借用語と言えるロマンス語系列の言葉には漢語を、古層にして中核を…

20230527 『ター』を観る。

2010年代後半のMe Too運動は、社会の空気を変えた。沈黙することを余儀なくされてきた声がついに語り出し、耳を傾けられるようになった。それはおそらく、ソーシャルメディアの隆盛と表裏一体の出来事である。被害者たちが声を上げ、広げ、つなげていくため…

20230816 Amazon Primeで『水星の魔女』シーズン1のながら視聴終了。

というわけでかなり適当に最後まで見た。見ながら思ったのは、これは『逆シャア』を遡及的に説明する物語ではないかということ。 『逆シャア』の大きな謎は、地球に落下しそうになったアクシズを押し返そうとするアムロにほかの機体も加わっていったとき、な…

翻訳語考。State の家性?

翻訳語考。なぜ state は国家なのだろう。なぜ「家」が入るのだろう。明治近代の造語なのかと思ってコトバンクで検索してみたところ、実は古来からある単語だった。「精選版 日本国語大辞典」が引く一番古い例は十七箇条憲法(604)。「百姓有レ礼。国家自治…

20230811 さくらももこ展@静岡市美術館

『ちびまる子ちゃん』はほぼリアルタイムで受容していたけれど、彼女が清水出身であることは意識していなかったように思う。漫画の中で次郎長のネタがあったと思うし、その他にも静岡ネタは仕込まれていた気はするけれど、さくらももこが市を上げて推すよう…

翻訳語考。悩ましい語順の問題。

翻訳語考。語順の問題は悩ましい。英語と日本語の文法構造が根本から違う以上——英語は主語-述語-目的語が、日本語は主語-目的語-述語が基本である——西欧語間の翻訳のような逐語訳はそもそも不可能だ。 そのような不可能性を踏まえたうえで、個人的には、でき…

翻訳語考。強調になる否定の接頭辞を持つ語の訳し方。

翻訳語考。強調になる否定の接頭辞を持つ語は、ストレートに訳すべきか、字面どおりひねるべきか。たとえばinvaluableは、valueが「ない」ではなく、valueという尺度に収まらない、つまり、ひじょうにvalueがあるという意味になる。pricelessもこれと同じ系…

翻訳語考。Municipalの(非)自律性。

翻訳語考。Municipalをどうしたものか。この関連語であるmunicipalityを最近はカタカナで「ミュニシパリティ」とする風潮もあるようだけれど、正直、いかがなものかと思う。かといって、Wikipediaが採用している「基礎自治体」(「国の行政区画の中で最小の…