うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

「奇妙な相貌をとって目覚めてくる日々」(パヴェーゼ「自殺」)

「ぼくの住んでいる都市が、通り過ぎる人や車、木立、何もかもが、朝方、鏡を覗きこんで≪そこにいるのは誰?≫とついたずねてしまう瞬間のように、いつもと同じでありながら、それとは認めがたい、奇妙な相貌をとって目覚めてくる日々がある。ぼくには、それが一年のなかでも、わずかに愛しうる日々なのだ。/そういう朝には、できれば、少し早めに事務所を抜け出して、街路へ降り、群衆にまぎれこみ、往き交う人びとがぼくを眺めるのと、おそらく、同じ方法で、通り過ぎる一人一人を、ためらわずにぼくは見据えてやる。なぜならばそういう瞬間には、確かに、自分を別人にする大胆な感覚が湧いてくるから。/そういう瞬間を思うままに引き起こす秘訣がもしもあれば、それにまさる貴重なものは人生にないだろう、とぼくは確信している。」(パヴェーゼ「自殺」)