うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

定義が見えないなかで物語る(『大江健三郎 柄谷行人 全対話』)

「大江 しかし、定義がだれの目にもはっきり見えてくる時代は、そのジャンルが終わる時じゃないですか……いつも前を見て、訳の分からない方向へ向かって書いていく、それが小説です。認識してもいないものをなぜ書けるのかというと、物語るという技術があるためです。そういうわけで、前を向いて書いている分には健全ですけれども、それがいつかのまにか後ろを向いて、自分の書いたものを検討しながらやるようになった。つまり自分にとっての小説の終わりというものを書こうとしてきたように思いますね。」(『大江健三郎 柄谷行人 全対話』)

「大江 世界言語になることをあらかじめ拒否した文章を書いて、それが文壇あるいは論壇で力を占めているのは、日本だけですよ。」(『大江健三郎 柄谷行人 全対話』)