うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

Zoomのスピーカー・ビュー・モードでやるバーチャル演劇の構図の問題性

20200412@バーチャル立ち稽古『おちょこの傘持つメアリー・ポピンズ』、くものうえ演劇祭

 

Zoomのスピーカー・ビュー・モードだと、はからずも、ふたりの対話が古典的ハリウッド映画の構図――対話相手の視点からの発話者の画が交互に入れ替わる――のはちょっとした発見だったけれど、古典的ハリウッドの構図がきわめて精密に計算されたものであるらしいものだから、それにこのような即興のカメラワークを比べるのはあまりに不当かもしれないけれど、やはり少々一本調子な感じがしてしまうというか、視点の交替が編集的な技ではなくて単なる機械的な移り変わりになってしまい、飽きる部分があるけれど、おそらくそれよりもっと問題なのは、セリフはないけれどその場にいるまたはその場で動いている俳優の空間的配置がよくわからないので、映像があるにもかかわらず、そして俳優たちが手持ちの洋服で衣装をまにあわせて手持ちの道具で小道具をこしらえているのはよくわかるけれど、全体の印象としてはラジオドラマに毛が生えた程度のものになっているというか、効果音がないという点ではラジオドラマのように音だけで聞かせようという迫真性がないというか、まあ、あくまでバーチャル立稽古であって、公開や鑑賞を前提としていないのだから、このあたりのことを不満として言い募るはあきらかに過大な要求のように思われるけれど、あえて公開するのであれば、そのあたりの「魅せ方」にたいする工夫があってもいいような気がするというか、そんな気もするけれど、そのなかでは片岡佐知子のぬいぐるみに名フダをつけて誰に絡んでいるのかを視覚的に明示するというのは、セパレートな画面で行われるバーチャル演劇に内在する、舞台全体の空間的配置や俳優同士の距離感の分からなさを、創造的かつユーモラスに補完する意味で、とてもおもしろい試みだと思った。