うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。カップルのふるまい。

アメリカ観察記断章。日本において人前でいちゃつくカップルは例外的だろう。軽く抱き合うくらいならともかく、人目のある公共の場で大っぴらにキスをすることはまれであるように思う。しかしアメリカだとごく普通に見かけるし、驚きなのは、それを誰も気にしていないことだ。ショッピングモールのなかにある行きつけのコーヒーショップでコーヒーを買ってテーブルに座り大学図書館で借りたチェスタトンの『正気と狂気の間で』をざっくりと読み飛ばしていたら、いつのまにか目の前に20代前半くらいのカップルが座っており、チェスタトンの大真面目に不真面目な議論を反芻するためページから目を離してふとテーブルの向こうに視線を飛ばすと、ふたりは軽いキスを交わしているではないか。この光景はいろんなところで目にしてきた。大学図書館でも見たことがある。アメリカ人にとってこれがどういう扱いになるのかよくわからないけれど、いちいち数えるのが馬鹿馬鹿しくなるほど頻繁に遭遇することからしても、例外というよりは常態であるように思う。見なかったことにしてチェスタトン私有財産制と分配主義論に立ち戻り半時ほどして本を読み終えるころカップルは姿を消していた。英語の雑踏のなかひとり日本語を読む。