うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。クリスマス料理(はあるのか)。

アメリカ観察記断章。日本において季節の出来事は特定の料理と結びつくが(新年と御節)、アメリカだとこれは食材との結びつきと言ったほうが正しいかもしれない(感謝祭と七面鳥)。スーパーに行ってもこれぞクリスマスのための料理というものがない。もちろん季節商品はあるし、クリスマスのご馳走のための特別コーナーのようなものはあるにはある。しかしそれは感謝祭の延長というか売れ残りのようなもので(クランベリーソース、パンプキンパイ用のスパイス)、クリスマスだからこそという華やかさに欠けている。もしかするとアメリカのクリスマスの華やかさは、食べ物ではなく、装飾的なもの(デコレーション、イルミネーション、ツリー)だとかプレゼント(ここ1週間というもの「◯◯日までに注文すればクリスマスに間に合うようにお届けします。送料無料!」というプロモメールが大量に届いていた)にあるのかもしれないし、それは必然的に家族愛的なものになるだろう。要するに自分にまったく無縁な生活領域である。学内寮の駐車場はほぼ空(20%くらいしか埋まっていない)で、夜になっても明かりの灯る部屋はほとんど見あたらない。もともと数の少ない街灯とそこかしこにある青い警備灯は圧倒的な暗闇のなかで肩身が狭そうだ。先週の突然の停電を思い起こさせる闇夜。そんな暗がりを眺めながらモーツァルトの『魔笛』を聞いてトワイスアップにしたバーボンの杯を重ねつつErnst BlochのThe Principle of Hopeを読むそんな特殊なクリスマスイブの過ごし方。