うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2015-01-01から1年間の記事一覧

「国民精神の健康」(パウンド「教師の使命」)

"The mental life of a nation is no man's private property. The function of the teaching profession is to maintain the HEALTH OF THE NATIONAL MIND." (Pound. "The Teacher's Mission.") 「国民の精神生活はだれかの私有財産ではない。教育職の役目…

アメリカ観察記断章。タトゥーについて。

アメリカ観察記断章。タトゥーについて。自分の見るかぎり、タトゥーをしている人は、三つのグループに分けられる。ひとつ、アスリート(そしてその民衆的な反映としてのブルーカラー)。ふたつ、セレブリティ(そしてその反映としてのファッショニスタ)。…

普遍的歓待、または敵扱いされない権利にして一時的な滞在権(カント「恒久的平和」)

"[Universal hospitality] is not a question of philanthropy but of right. Hospitality means the right of a stranger not to be treated as an enemy when he arrives in the land of another. One may refuse to receive him when this can be done wi…

アメリカ観察記断章。男性性と軍隊的なものの近さ。

アメリカ観察記断章。アメリカにおいて「男性性」ないしは「マッチョさ」の極点には軍隊的なものがあるのではないかという気がしている。ふたつの例。ひとつめ。先学期、ある学生が何度か授業を欠席したのだけれど、学期末のレポートのなかで「軍隊の訓練に…

物語装置に記録されないこと(ジェイムソン『未来の考古学』)

"[I]n narrative analysis what is most revealing is not what is said, but what cannot be said, what does not register on the narrative apparatus." (Jameson. Archaeologies of the Future. xiii) 「物語分析においてありありと明るみに出るのは、語…

アメリカ観察記断章。Democracyの原風景。

アメリカ観察記断章。アメリカの学生はdemocracyというと何を思い浮かべるのか。正直、彼女ら彼らが政治(的なもの)としての民主主義で何を理解しているかはいまだによくわからないが、民主主義的な価値観ということになれば、ふたつのポイントがすぐに思い…

アメリカ観察記断章。英語の敬語表現。

アメリカ観察記断章。英語の敬語表現はたしかに日本語ほどややこしくない。実を言えば英語特有の面倒な問題がいろいろあるけれど、日常のシーンで単純にちょっと敬意度を上げたいなら、sirというような表現を「付け足せ」ばそれで案外間に合ってしまうらしく…

アメリカ観察記断章。夏のDMV。

アメリカ観察記断章。毎年夏になるとDMV(Department of Motor Vehicles)のオフィスに足を運ぶ羽目になる。ビザの関係上、大学は1年単位でしか滞在許可を出してくれないので、それに合わせて免許証も毎年書きかえなければいけない。しかし、DMVほどできれば…

アメリカ観察記断章。「他者」が傍にいるのがカリフォルニアの現実。

アメリカ観察記断章。このところ夜は家で夕飯を食べたあと近所のスタバで1、2時間本を読むことにしているのだけれど、店内を見渡すと、中近東を出自とする(らしい)男たちをものすごくよく見かける。彼らが夏の間だけの学生なのか、それともUCIの生徒なのか…

アメリカ観察記断章。「日本語」が聞こえてきた。

アメリカ観察記断章。先日巨大ショッピングモールを歩いていて、前方から「日本語」が聞こえてきた。自分の耳に届いたのは「えー」という音だけだったけれど、なぜか、それが日本語であると瞬時に断定できたのだ、すれ違うとき、確認のために耳を澄ませてみ…

アメリカ観察記断章。加工されたオーガニック。

アメリカ観察記断章。「有機的organic」であることと、加工されていることは、アメリカでは、矛盾しないらしい。だから「オーガニックミルク」でも「低脂肪」「無脂肪」のものがあるし、オレンジジュースにしても「カルシウム添加」があり、卵にしても「ω-3…

モノそのものになりたい(フローベール、ラフカディオ・ハーン英訳『聖アントワーヌの誘惑』

"I long to fly, to swim, to bark, to bellow, to howl. Would that I had wings, a carapace, a shell--that I could breathe out smoke, wield a trunk,--make my body writhe,--divide myself everywhere,--be in everything,--emanate with all the odo…

アメリカ観察記断章。「私の」日本語。

アメリカ観察記断章。バークリーを除き、カリフォルニア大学はクオーター制で回っている。1クオータは10週プラス期末試験週間(Finals Week)で、これに採点期間が加わるので、13週ほどで1サイクルとなる。秋と冬のあいだにはクリスマスが入るので冬休みが2…

アメリカ観察記断章。「丁寧に!」に相当する英語表現の不在?

アメリカ観察記断章。「丁寧に!」にぴったり相当する英語表現はどうも存在しないらしい。アメリカはいろいろなところで大雑把だ。細やかさに欠けるし、繊細さとか洗練とかという言葉を使いたいと思う場面に遭遇することは本当にまれである。もちろんこうし…

アメリカ観察記断章。「カリフォルニアなら未来の社会の可能性が見える」。

アメリカ観察記断章。7年半ほど前ニューヨークに行こうかカリフォルニアにしようか迷っていたとき、父は、電話での雑談的真剣なトークの中で、「東海岸には過去の社会があるがカリフォルニアなら未来の社会の可能性が見えるのではないか」というようなことを…

「芸術のなかにある謎めいたもの、生命のなかにある謎めいたもの、自然のなかにある謎めいたもの」(ワイルド『深き淵より』)

"Still, I am conscious now that behind all this beauty, satisfying though it may be, there is some spirit hidden of which the painted forms and shapes are but modes of manifestation, and it is with this spirit that I desire to become in ha…

わたしたちの生の根底にあるもの(ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』)

"Life is not governed by will or intention. Life is a question of nerves, and fibres, and slowly built-up cells in which thought hides itself and passion has its dreams. You may fancy yourself safe and think yourself strong. But a chance t…

極限的な接近状態(ドゥルーズ『批判と臨床』)

"On dirait plutôt qu'une zone d'indistinction, d'indiscernibilité, d'ambiguité, s'établit entre deux termes, comme s'ils avaient atteint le point qui précède immédiatement leur différenciation respective : non pas une similitude, mais un g…

アメリカ観察記断章。冠詞の誤用。

アメリカ観察記断章。英語を学ぶ日本語話者が一度は絶対につまづく(そしておそらく決して完全には克服できない)ことのひとつに冠詞の用法がある。7年前、アメリカにくる前はほとんど英語が書けなかった自分も、今や、さほど不自由なく英語を使えるようにな…

No night is too long with whiskey

UCI

No night is too long with whiskey.

成績の刻み具合

UCI

What I came to realize with increasing conviction is that it's not quite useful to evaluate essays by using the grading scale as we currently have. It's pretty easy to divide papers into three or four categories: A, B, C, and D. But what's…

アメリカ観察記断章。立看板の不在。

アメリカ観察記断章。うちの大学のキャンパス特有の事情ではないと思うが、アメリカのキャンバスには日本のキャンパスのようにベニヤ板の立看板がない。日本がいわば情報を由布するため(だけ)に勧誘の立看板をずっと放置しているとするなら、アメリカにお…

アメリカ観察記断章。アメリカの男たちの身体の落ち着きのなさ。

アメリカ観察記断章。『グレイト・ギャツビー』を再読していたら、こんな一節があった。「彼は車のダッシュボードのうえで、まったくアメリカ的なあの持て余しぎみの体の動きをどうにか抑えようとしていた。思うに、これは若い頃に体を動かしたりきちんと座…

過去を修正する(フィッツジェラルド『グレイト・ギャツビー』)

""Can't repeat the past?" he cried incredulously. "Why of course you can!...I'm going to fix everything just the way it was before," he said, nodding determinedly...He talked a lot about the past and I gathered that he wanted to recover so…

アメリカ観察記断章。政治的だけれどローカルかつ具体的な公報活動。

アメリカ観察記断章。今日カフェテリアそばのちょっとしたステージのようなところを通ると、「mental health awareness week」という小さな看板がステージにポツンと置かれていた。アメリカで長らくキャンパスライフを送っているけれど、こういうPR活動の活…

事実よりしつこい比喩(ド・マン『読むことの寓意』)

"Metaphors are much more tenacious than facts." (de Man. Allegories of Reading. 5) 「比喩は事実よりずっと執拗である。」(ド・マン『読むことの寓意』)

サプライズパーティーで授業を欠席しますという連絡

UCI

A few weeks ago a student emailed me, saying that she's not coming to class because her family gave a surprise party for her birthday. And the same student wrote to me today that she's absent on Friday because she's going home and surprise…

アメリカ観察記断章。商業的空間の言語。

アメリカ観察記断章。アメリカで小売店に入り店員と目線が合うと、「how are you?」とか「how are you doing?」のような言葉が返ってくる。アメリカ生活7年目(!)が終わろうとしているというのに、いまだにこの親しげな話し掛けに慣れることができず、一瞬…

アメリカ観察記断章。宗教的情熱。

アメリカ観察記断章。アメリカ社会は功利的な原則によって成り立っていると思う。にもかかわらず、ここには、利益=利潤的なものでは説明できない何かもある。学部生相手に英作文の授業を受け持ってきて6年になるが、20人くらいのクラスで、常にひとりふたり…

アメリカ観察記断章。アメリカの都市空間における「抜け道」の不在。

アメリカ観察記断章。サンフランシスコを歩いていて思ったこと。アメリカの都市空間にはいわゆる「抜け道」のようなものがないように思う。空間がブロック単位で閉じていて、建物の表層=表しか見えないようになっているのだ。実際、アメリカで、ビルの「裏…