うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。夏のDMV。

アメリカ観察記断章。毎年夏になるとDMV(Department of Motor Vehicles)のオフィスに足を運ぶ羽目になる。ビザの関係上、大学は1年単位でしか滞在許可を出してくれないので、それに合わせて免許証も毎年書きかえなければいけない。しかし、DMVほどできれば行きたくないところもない。なぜかというと、ここはとことん待たされるのだ。今日は用を足すのに1時間半かかった。そのうち、窓口で実際に対応してもらった時間は3分にも充たないにもかかわらず、だ。DMVはいわゆる「お役所」だけれど、なぜか、とてもゆるい空気が流れている。建物は古臭いのに、フラットスクリーンが天井からいくつもぶら下がり、無音でCMを流している。基本的にDMVは旧態依然だ。しかしここで「伝統」といえそうなのは、日本の役所のような厳格さではなく、いいかげんさだと思う。適当さがデフォルトなのだ。それはリラックスした雰囲気を作るし、そのおかげなのか、待たされてもそこまでイライラしない。たとえば、DMVの職員にはドレスコードのようなものはないらしい。50くらいの男性職員ともなればポロシャツにスラックスというそれなりの格好だけれど、20代30代の職員ともなると、やたら派手な柄のTシャツを着ていたりするので、彼女ら彼らは、カウンターの向こうにいる無機質な存在(権力の代弁者)というよりは、カウンターのこちらで待つことに飽き飽きしている申請者に近いように感じる。彼らもまたシステムに翻弄される犠牲者であり、その意味で、申請者と立場的には変わるところがないかのようだ。DMVに来るといつも、何か、とても奇妙な、とても不思議な、連帯感のようなもの覚える。