うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章

アメリカ観察記断章。「他者」が傍にいるのがカリフォルニアの現実。

アメリカ観察記断章。このところ夜は家で夕飯を食べたあと近所のスタバで1、2時間本を読むことにしているのだけれど、店内を見渡すと、中近東を出自とする(らしい)男たちをものすごくよく見かける。彼らが夏の間だけの学生なのか、それともUCIの生徒なのか…

アメリカ観察記断章。「日本語」が聞こえてきた。

アメリカ観察記断章。先日巨大ショッピングモールを歩いていて、前方から「日本語」が聞こえてきた。自分の耳に届いたのは「えー」という音だけだったけれど、なぜか、それが日本語であると瞬時に断定できたのだ、すれ違うとき、確認のために耳を澄ませてみ…

アメリカ観察記断章。加工されたオーガニック。

アメリカ観察記断章。「有機的organic」であることと、加工されていることは、アメリカでは、矛盾しないらしい。だから「オーガニックミルク」でも「低脂肪」「無脂肪」のものがあるし、オレンジジュースにしても「カルシウム添加」があり、卵にしても「ω-3…

アメリカ観察記断章。「私の」日本語。

アメリカ観察記断章。バークリーを除き、カリフォルニア大学はクオーター制で回っている。1クオータは10週プラス期末試験週間(Finals Week)で、これに採点期間が加わるので、13週ほどで1サイクルとなる。秋と冬のあいだにはクリスマスが入るので冬休みが2…

アメリカ観察記断章。「丁寧に!」に相当する英語表現の不在?

アメリカ観察記断章。「丁寧に!」にぴったり相当する英語表現はどうも存在しないらしい。アメリカはいろいろなところで大雑把だ。細やかさに欠けるし、繊細さとか洗練とかという言葉を使いたいと思う場面に遭遇することは本当にまれである。もちろんこうし…

アメリカ観察記断章。「カリフォルニアなら未来の社会の可能性が見える」。

アメリカ観察記断章。7年半ほど前ニューヨークに行こうかカリフォルニアにしようか迷っていたとき、父は、電話での雑談的真剣なトークの中で、「東海岸には過去の社会があるがカリフォルニアなら未来の社会の可能性が見えるのではないか」というようなことを…

アメリカ観察記断章。冠詞の誤用。

アメリカ観察記断章。英語を学ぶ日本語話者が一度は絶対につまづく(そしておそらく決して完全には克服できない)ことのひとつに冠詞の用法がある。7年前、アメリカにくる前はほとんど英語が書けなかった自分も、今や、さほど不自由なく英語を使えるようにな…

アメリカ観察記断章。立看板の不在。

アメリカ観察記断章。うちの大学のキャンパス特有の事情ではないと思うが、アメリカのキャンバスには日本のキャンパスのようにベニヤ板の立看板がない。日本がいわば情報を由布するため(だけ)に勧誘の立看板をずっと放置しているとするなら、アメリカにお…

アメリカ観察記断章。アメリカの男たちの身体の落ち着きのなさ。

アメリカ観察記断章。『グレイト・ギャツビー』を再読していたら、こんな一節があった。「彼は車のダッシュボードのうえで、まったくアメリカ的なあの持て余しぎみの体の動きをどうにか抑えようとしていた。思うに、これは若い頃に体を動かしたりきちんと座…

アメリカ観察記断章。政治的だけれどローカルかつ具体的な公報活動。

アメリカ観察記断章。今日カフェテリアそばのちょっとしたステージのようなところを通ると、「mental health awareness week」という小さな看板がステージにポツンと置かれていた。アメリカで長らくキャンパスライフを送っているけれど、こういうPR活動の活…

アメリカ観察記断章。商業的空間の言語。

アメリカ観察記断章。アメリカで小売店に入り店員と目線が合うと、「how are you?」とか「how are you doing?」のような言葉が返ってくる。アメリカ生活7年目(!)が終わろうとしているというのに、いまだにこの親しげな話し掛けに慣れることができず、一瞬…

アメリカ観察記断章。宗教的情熱。

アメリカ観察記断章。アメリカ社会は功利的な原則によって成り立っていると思う。にもかかわらず、ここには、利益=利潤的なものでは説明できない何かもある。学部生相手に英作文の授業を受け持ってきて6年になるが、20人くらいのクラスで、常にひとりふたり…

アメリカ観察記断章。アメリカの都市空間における「抜け道」の不在。

アメリカ観察記断章。サンフランシスコを歩いていて思ったこと。アメリカの都市空間にはいわゆる「抜け道」のようなものがないように思う。空間がブロック単位で閉じていて、建物の表層=表しか見えないようになっているのだ。実際、アメリカで、ビルの「裏…

アメリカ観察記断章。アメリカの祝日の宗教性。

アメリカ観察記断章。アメリカでイースターは公式な「祝日」扱いではない。これはアメリカが基本的に政教分離を謳っていることを考えれば当然だ。しかしショッピングモールはほぼ祝日営業で、終日休みのところも多い。つまり、アメリカでは、依然として宗教…

アメリカ観察記断章。男女兼用トイレ。

アメリカ観察記断章。日本ではほとんどスタバのようなコーヒーショップに行ったことがないのでよく覚えていないのだけれど、アメリカの狭いスタバのトイレはだいたい男女兼用だ。そしてこれはスタバに限らず、かなり一般的な慣習であるように思われる。つま…

アメリカ観察記断章。アメリカの「百貨店」?

アメリカ観察記断章。アメリカに日本で言うところの「百貨店」があるのかと問われると、答えに窮する。ないわけではない。NordstromだとかMayc'sはたしかに「デパート」のようで、高級(志向)で年齢層が高めのメンズやレディースの洋服があり、化粧品があり…

アメリカ観察記断章。階級的で年齢的な飲み物としてのアルコール。

アメリカ観察記断章。ビールはきわめて階級的で年齢的な飲み物であるようだ。大学院生の集まりともなればビールが主流、ファカルティ主催のものならワインがメインになる。とはいえ、これは文化的なもので経済的なものではないように思う。実際、かなり安い…

アメリカ観察記断章。アメリカで売っているビール。

アメリカ観察記断章。アメリカで売っているビールといえばまず圧倒的に瓶である。それも日本のような大瓶ではなく、350mlほどの小瓶で、厚紙のパックに6本入ったものがもっともスタンダード。安いもので6ドル弱、高くても10ドル前後。そしてだいたいが地ビー…

アメリカ観察記断章。クリスマス料理(はあるのか)。

アメリカ観察記断章。日本において季節の出来事は特定の料理と結びつくが(新年と御節)、アメリカだとこれは食材との結びつきと言ったほうが正しいかもしれない(感謝祭と七面鳥)。スーパーに行ってもこれぞクリスマスのための料理というものがない。もち…

アメリカ観察記断章。耳で聞いたものを書き出すアメリカの学生たち。

アメリカ観察記断章。やっと期末レポートの採点が終わった。丁寧な推敲もなく無頓着に書きなぐられたと思しきアメリカの学生(自分が教えているのは理系の学生だが)の文章を読んでいると、彼女ら彼らが言葉をまずなにより耳でとらえているのだなと思い知ら…

アメリカ観察記断章。カリフォルニアで耳にする外国語。

アメリカ観察記断章。今年度は明らかに韓国(系)と中国(系)の学生をキャンパスのいたるところで数多く目にしている。カリフォルニアに行くことでここまで自分の耳が中国語や韓国語に晒されることになるとはまるで予想もしていなかった。しかし現実はこれ…

アメリカ観察記断章。カップルのふるまい。

アメリカ観察記断章。日本において人前でいちゃつくカップルは例外的だろう。軽く抱き合うくらいならともかく、人目のある公共の場で大っぴらにキスをすることはまれであるように思う。しかしアメリカだとごく普通に見かけるし、驚きなのは、それを誰も気に…

アメリカ観察記断章。アメリカの商業施設の相対的な静かさ。

アメリカ観察記断章。アメリカの商業施設は日本のそれよりはるかに物静かだ。過剰なBGMがないからだろう。何かしらの音楽は流れていることのほうが多い。しかし無音に近いところもある。実際、今日ブラック・フライデーの余波を見るために足を運んだ南カリフ…

アメリカ観察記断章。感謝祭シーズン、家族とバーゲン。

アメリカ観察記断章。アメリカ社会には明確なリズムが刻まれている。その最たるものがサンクスギビング・デーだ。もはや祝日だろうとおかまいなしに四六時中開いている店がある日本からすると驚きなのは、感謝祭の日、アメリカ社会全体が完全な期休止状態に…

アメリカ観察記断章。「教育は権利だ!」

アメリカ観察記断章。先日の学費値上げ反対プロテストのなかでも聞いたスローガンにpublic education should be freeというものがある。「公教育は無料であるべきだ」という掛け声はいつも何かしっくりこないものを感じていたけれど、education is not a pri…

アメリカ観察記断章。求道の欠如。

アメリカ観察記断章。日本は良くも悪くも「道」を求めすぎる。この最悪の実例は体育会系精神論だろう。だがしかし、アメリカにこういう心構えがまるでないらしいというのもどうかとは個人的に思う。単純なことが適当にすませることとイコールになってしまう…

アメリカ観察記断章。傍観的参加者として。

アメリカ観察記断章。前Homeland Security省長官にして現カリフォルニア大学総学長ジャネット・ナポリターノは来年度から5年に渡って毎年5%学費を上げていくという計画を提案した。これはかつて現カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウンとカリフォルニア大…

アメリカ観察記断章。日常における軍関連のプレゼンス。

アメリカ観察記断章。アメリカにおいても軍隊は非日常だと思う。しかし軍に関するものは日常に深く入り込んでいる。たとえば11月11日はベテランズ・デー(退役軍人の日)で国民の祝日である。コミュニティのイベントに行けば、だいたい軍関係のブースが出て…

アメリカ観察記断章。可視化されるパトロンの存在。

アメリカ観察記断章。日本におけるクラシック音楽のコンサートは儀式のようなものだと思う。それはほとんど宗教めいており、クラオタという人種が集う厳粛な祭典のようなものだ。しかし南カリフォルニアのクラシック音楽のコンサートでは、それとはまったく…

アメリカ観察記断章。金持ちの寄付と文化のアウトリーチ。

アメリカ観察記断章。先月からコンサートに行きまくっている。ユロフスキ・LPO、スメタナトリオ、ハーゲン四重奏団、モザイク四重奏団、そして今日のビエロフラーヴェク・チェコフィル。安い当日券で入っているので、ワールドクラスの演奏だというのに、ここ…