うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2016-01-01から1年間の記事一覧

質量をもったオブジェ、非能率的な何物か(四方田犬彦『先生とわたし』)

「彼は書物を情報の集積物としてのみ遇することを軽蔑した。書物はまず質量をもったオブジェであり、整理カードや検索機に還元できない、非能率的な何物かでなければならなかった。ある主題の論文を執筆せんがために、体系的に書物のリストを制作し、それを…

人民の自由への根源的な希求(中沢新一『僕の叔父さん』)

「根源的な自由を求める心というものが、人間の本質をつくっている。だから人類はそれぞれの社会条件に合わせながら、さまざまな形態のアジールをつくり出すんだ。未開社会には未開社会の自由の空間というものがあったし、古代社会には古代社会の自由を表現…

作者の権力、読者による権力奪取(笠井潔『動物化する世界の中で』)

「作者が自作の意味や読み方を、読者に権力的に強制する。あるいは「規律化」する。このような規律権力の行使に、民主主義の立場から抗議しても無力です。民主主義的主体それ自体が、規律権力によって生産されている以上。「読み抜き、読み破り、読み壊すと…

「理屈ではない優しさ」(ウルフ『灯台へ』)

"It was odd, she thought, how if one was alone, one leant to inanimate things; trees, streams, flowers; felt they expressed one; felt they became one; felt they knew one, in a sense were one; felt an irrational tenderness thus (she looked …

アメリカ観察記断章。Liquor、CLEANERS、ALTERATIONS。

アメリカ観察記断章。Liquorショップは日本の感覚からすると微妙に時代錯誤な感じがする代物だ。あえていえば、地方小都市でしか見られないような遺物に東京周辺で遭遇してしまったような驚きと戸惑いがある。しかしこの路線でアメリカの郊外を見なおしてい…

アメリカ観察記断章。アメリカの看板表記。

アメリカ観察記断章。アメリカの看板表記はなぜこうもそっけないのだろう。ショッピングモールのある一角の入口にはだいたいそこに入っている店舗が記載されているのだが、だいたい、文字情報だけ、店舗名だけだ。色使いもそっけなく、白地に黒というシンプ…

アメリカ観察記断章。市町村の資力とインフラの充実具合。

アメリカ観察記断章。日本でも市町村の資力によってインフラの充実具合に差があるとは思うが、アメリカはそれがとくに目に見えてしまうところがある。基本的に民主党が強いカリフォルニアにおいて数少ない共和党の牙城であるOCを離れ、LAから南に20マイルほ…

「街は多彩、雑多、充溢そのもの」(渡辺京二『逝きし世の面影』)

「バードの記述でおどろかされるのは、それぞれの店が特定の商品にいちじるしく特化していることだ。羽織の紐だけ、硯箱だけ売って生計が成り立つというのは、何ということだろう。もちろん、店の規模はそれだけ小さくなる。ということは一定の商品取引量の…

見慣れぬこまごました生活の細部に注がれるエキゾティシズム(渡辺京二『逝きし世の面影』)

「人間にとって政治経済的諸関係はたしかに、その中で生きねばならぬ切実な所与であるだろう。しかしそれに劣らず、いやあるいはそれ以上に、煙草入れや提灯やこまごました飾りものは、一個の人間にとって生の実質をみたす重要な現実なのだ。アーノルドは日…

偏見の色眼鏡ではなく薔薇色の眼鏡で見る(モース『日本のすまい、内と外』)

"In the study of another people one should if possible look through colorless glasses; though if one is to err in this respect, it were better that his spectacles should be rose-colored than grimed with the smoke of prejudice. The student …

アメリカ観察記断章。サードウェーブ系コーヒーショップのなかの微妙な違い。

アメリカ観察記断章。コーヒー好きなので(あとコーヒーはいくら高くともたかが知れているから、というのもあるが)いろいろな店に行ってみた。偏見かもしれないが、いわゆるサードウェーブ系のなかにも微妙な違いがあるように思う。そしてそれと似たような…

ついに博士論文草稿を書き上げる

UCI

Okay, I finally, FINALLY, finished writing the last chapter on Kropotkin. Last two months I kept telling people that I was finishing it and I meant that. I believed that I was finishing, but I kept writing and revising, which became an une…

「アメリカ合衆国と日本のふたつの帝国主義を同時に撃つ」(豊浦志朗『叛アメリカ史』)

「ふつう、アメリカ合衆国の『少数民族』と言われる人間の叛史は、民族復権の過程と併走して行われる。そこでは『帰属性』がたえず問題にされ、人はひとまずその出身地に精神的な回帰を試みて、そこから反撃を開始するのだ。黒人は強奪されてきたアフリカに…

アメリカ観察記断章。アメリカの食の豊かさ。

アメリカ観察記断章。アメリカの食は貧しいのか。アメリカ「人」の食は貧しいかもしれないし、アメリカ「文化」は食事そのものにそこまで興味はないような気がするけれど、日本に流通しているようなステレオタイプほどには貧しいものではないというのがここ…

最後の引っ越し

UCI

It turns out that I have to move out from Costa Mesa early next month, and I'm now looking for a new room to stay by the beginning of December. I'm not decided yet, but leaning toward the place in Long Beach which I visited today. It's ver…

アメリカ観察記断章。アメリカの中華。

アメリカ観察記断章。外食は基本的にしない主義だったが、いまは昼を外で食べることが多い。近隣にある中華料理屋をいろいろ試したみたが、もう飽きてきた。基本的に7ドル前後のランチメニューないしはテイクアウト(to go)ばかりだからというのもあるが、…

アメリカ観察記断章。水とストロー。

アメリカ観察記断章。アメリカで水(お冷)を頼むと絶対にストローがついてくる。なぜなのか。ストローで水を飲んでも美味しくならないし、とくに何か理由があるとも思えないのだが(コップやカップの縁が汚れないように?)、ファーストフードでも中華料理…

アメリカ観察記断章。100円ショップとthrift shop。

アメリカ観察記断章。アメリカにも100円ショップのようなものはある。99セントショップがそうだ。しかし日本の100円ショップが、その名称にもかかわらず、100円であることをそこまで喧伝しないし看板にデカデカと書き込まない一方で、アメリカの99セントショ…

アメリカ観察記断章。ドーナツ。

アメリカ観察記断章。長らくすごした学内寮を出て、隣町に引っ越した。大量の本を積んだ車を移動図書館のようにしてそこらのコーヒーショップを渡り歩いている。金がないので外食は控えているが、多少は食べる楽しみが欲しいのでコーヒーのお供にドーナツ屋…

アメリカ観察記断章。ファッショナブルさの選択肢の少なさ。

アメリカ観察記断章。アメリカで男で若者以上中年未満くらいでファッショナブルであろうとすると、かなり選択肢が狭いように思う。そういう人々はお洒落なというかこだわりのコーヒーショップのようなところに行けば遭遇できる。よく見かけるのは、サイドの…

アメリカ観察記断章。アメリカの日本語Tシャツ。

アメリカ観察記断章。日本で売っているTシャツの英語が文法的にも内容的にも噴飯物であるのはよく知られた事実だが、アメリカで売っているらしい日本語Tシャツもまたかなりの頻度で奇妙なものである。だから滅多なことでは今更おどろきはしないのだが、今日T…

学生のレポートを処分するか

UCI

What do you do with student papers and bluebooks? I have a few boxes full of such things and there's no available space for keeping them any longer. However, as I imagine throwing them away into a dust box and they would get smeared with d…

脚注を長く引き伸ばす

UCI

Very often I find myself extending already extremely verbose footnotes to monstrous lengths. And I take great pleasure in digressing from the main argument, freely dropping the titles of a huge amount of books and articles I consulted, scr…

アメリカ観察記断章。挽肉。

アメリカ観察記断章。挽肉はアメリカにおいて最下層の商品なのだろうかという気がする。それはある意味、塊やスライスでは売れなくなった商品の再利用で、買ってからパッケージでは見えなかった部分を見るとすでに薄茶色に変色していたりする。実際、肉売り…

アメリカ観察記断章。アメリカのスーパーで売っているソーセージ。

アメリカ観察記断章。アメリカのスーパーで売っているソーセージはいまだにどうやって料理すればおいしく食べられるのかよくわからない。端的に言うと、調理が面倒なのだ。皮が薄いのでボイルするといまいちだし下手をすると破裂してしまう。中は完全に生だ…

アメリカ観察記断章。「すみません」とI'm sorryとexcuse me。

アメリカ観察記断章。明確な理由もないのに何となくI'm sorryと言ってはいけない、というのはアメリカ生活を目指すなかのどこかで必ず目にするアドバイスだ。ここにあるのは、アメリカは訴訟社会だからむやみやたらに謝るととんでもないことになる、という警…

アメリカ観察記断章。"Sorry about that!"

"Sorry about that!" アメリカで生活していると頻繁に耳にする。表現のフォーマルさを字義通り日本語に翻訳するなら「それ、ごめんなさいね」くらいの軽いノリになる気がするが、実際は一般の商店で頻繁に使われている決まり文句である。だからおそらく日本…

博論をあらかた書き終えてやっと内部分裂に気づく

UCI

At the last stage of writing/editing, I'm dismayed to realize, finally, that multiple projects are going on in my drafts and they should have been pursued separately. Now it's clear that my drafts need be sorted out into two groups, one fo…

アメリカ観察記断章。祝日とセールの結びつき。

アメリカ観察記断章。独立記念日が近い。登録しているショッピングサイトからセールの知らせが届く。祝日とセールが結びつくのは珍しいことではない。たとえばサンクス・ギビング・デイからクリスマスはアメリカの商戦において最重要期間となっている。しか…

飲んで書いて直して朝6時半

UCI

drinking, writing, revising, making another glass of bourbon at 6:30...