うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。"Sorry about that!"

"Sorry about that!" アメリカで生活していると頻繁に耳にする。表現のフォーマルさを字義通り日本語に翻訳するなら「それ、ごめんなさいね」くらいの軽いノリになる気がするが、実際は一般の商店で頻繁に使われている決まり文句である。だからおそらく日本語の対応表現ということになれば「その件についてはまことに申し訳ございません」あたりが妥当かもしれない。日本語の接客が過剰に丁寧というべきか、アメリカのそれがフレンドリーすぎると言うべきか。

しかし日本語の「申し訳ございません」がしばしば気持ちのこもらない(こめられない?)紋切り型表現であるとすれば、英語の「sorry about that!」は話し手の感情が入っている言い回しである。ここには個人独自の抑揚があり、(建前にすぎないにしてもそれなりに心のこもった)気持ちがある。「申し訳ございません」は誰が言っても同じような言い方になるが、「sorry about that」は千差万別であるし、sorryという単語でアメリカの店員が表現しているのはつまるところ謝罪ではないように思う。個人的な感覚にすぎないかもしれないが、ここにあるのは、「詫び」というより「共感」ではないか。もちろん店の一員として店の不備について謝っているという側面はあるけれど、それと同時に、店の不備のせいで不便を被った顧客の不満に寄り添っているような部分が少なからずあるような気がする。

そういえば、日本語の「申し訳ございません」は鹿爪らしい面でなければtongue-in-cheekになってしまうが、英語のsorry about thatその点はそこそこ自由度がある。さすがに笑顔はなしだと思うが、まるで自分が不便を被ったような心底困ったような顔が意外なほどよく似合う。