うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

見慣れぬこまごました生活の細部に注がれるエキゾティシズム(渡辺京二『逝きし世の面影』)

「人間にとって政治経済的諸関係はたしかに、その中で生きねばならぬ切実な所与であるだろう。しかしそれに劣らず、いやあるいはそれ以上に、煙草入れや提灯やこまごました飾りものは、一個の人間にとって生の実質をみたす重要な現実なのだ。アーノルドは日本の礼節と工芸品と風景を讃美して、当時の日本知識人たちの顰蹙を買った。だが、当時の日本人の現実の生を幸多きものたらしめた与件こそ、日常生活を形どる礼節であり、身辺を慰めるこまごました飾りものであり、さらに美しい風景ではなかったか。エキゾティシズムは見慣れぬこまごました生活の細部に目を注ぐ。従ってそれはある文明の肌ざわりを再現することができるのだ。」(渡辺京二『逝きし世の面影』30頁)