うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。市町村の資力とインフラの充実具合。

アメリカ観察記断章。日本でも市町村の資力によってインフラの充実具合に差があるとは思うが、アメリカはそれがとくに目に見えてしまうところがある。基本的に民主党が強いカリフォルニアにおいて数少ない共和党の牙城であるOCを離れ、LAから南に20マイルほどのロングビーチに引っ越し、OCがいかに特殊な場所であったのかを実感している。コーヒーショップを探しながら、日本人が多く住むというトーランスや深夜も絶えることなく煙を吐き出す工場が林立するカーソン、金持ちが住むという半島に突き出した丘陵地のパーロス・ヴェルデスやロングビーチダウンタウンをドライブする毎日だが、ブロック単位でいきなり道の凸凹がなくなったり、ガタガタの道になったりする。ストリート一本で街の雰囲気が一変する。まるで空間に見えない柵でも張り巡らされているかのようだ。

アーヴァインはとにかく盛り場を作らないという計画都市だった。だからダウンタウンは存在せず、商業エリアは基本的にショッピングモールに限定され、酒を出すバーは夜11時位に閉まっていた。たぶん、アルコールの取り扱いについてかなり細かく条例で決まっているのだと思う。そうした徹底的に管理されたところから、そういうことについてもっと緩やからしいところをドライブしていると、街のあちこちに「Liquor」という古ぼけた黄色い看板を掲げた小さな店舗を見かけることに驚いてしまう。

Liquorとはいうものの、実態は何でも屋に近い。ちょっとした日用雑貨から飲料や食物、酒はもちろんとして、タバコやシガーのような嗜好品までそろっている。「コンビニ」というよりは、10年か20年くらい前は日本のどこにもあった「酒屋」に近い。しかし日本で「酒屋」がほぼ完全に駆逐されてしまったのにたいして、アメリカではなぜLiquorショップが生き残っているのか。

正直なところを言うと、よくわからない。価格という点についていえば、スーパーとはギリギリ勝負できるか、ちょっと負けているというレベル。品揃えについてはおそらくスーパーのほうが豊富だろうし、酒類を専門に扱う大型店舗にはとうてい太刀打ち出来ない。ただ、日本の酒屋がコンビニとの競合に敗れたとすると、アメリカではコンビニとLiquorにそういうライバル関係がないというのはあると思う。アメリカのコンビニは基本的にガソリンスタンドの併設施設であり、それゆえ酒は売ってない(はずだ)。ガソリンスタンドもリカーショップもどちらも交差点にあるものだが、リカーショップのほうはもっとコミュニティー寄りの場所にあり、ガソリンスタンド/コンビニは大通りや交通量の多いところにある。

 

移民系とでも言えばいいのか、ある特定の出自の人々が来るから成り立っている店という側面はあると思う。そしてそれは売り手買い手の双方向的な関係、いわば(やや強制的ではあるものの)相思相愛的な間柄ではないか。おそらく日系の店も、もともとはそういうものだったのだろう。しかし、ミツワにしてもリトルトーキョーにしても、ビジネスとしてそういう段階をすでに過ぎてしまっているし、日系人にしても、同郷人が経営するところで買うという忠実さをもはや保持してはいないように思う。もしかすると通貨両替の問題もあるのかもしれない。