うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

記憶のありか(プルースト『花咲く乙女たちのかげに』)

「私たちの記憶の最良の部分は私たちの外、たとえば、雨を含んだ風や閉め切った部屋の匂い、最初に火が熾りかけたときの香りのうちに、そう、私たちの知性が使い道を知らずに軽んじていた何か──最後まで取り置かれていた過去であり、過去の最良の部分でもあるもの、すなわち、涙が最後の一滴まで涸れ果てたと思われたときになおも私たちに涙を流させる何か──を私たちが自分で見いだすことのできるところならどこにでも存在している。」(プルースト高遠弘美 訳『花咲く乙女たちのかげに』)