うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

翻訳語考。ワン・ノブ・ゼムの訳し方、または日本語と西洋語の視点の違い。

One of Xs という言い回しは、単数複数を区別する西洋語特有のものであり、日本語には上手く移し替えられないものであるように感じていた。

たとえば、I’m one of the witnesses のようなセンテンスを、「わたしは目撃者のひとりです」とするのは、正確ではあるものの、日本語としてはわざとらしく、いかにも翻訳調であるように感じていた。

原文と訳文ではなく、訳文だけを読んで(必要箇所だけ原文と照らし合わせながら)手直ししていたら、「わたし〈も〉目撃者です」というような言い回しを思いついた。

世界認識の視点の問題なのだろう。

日本語はつまるところ、一人称の抒情的・情念的な視座に捉われており、二人称に立つのがせいぜいだ。しかし、西洋語では三人称的な俯瞰的視点——おそらくその延長線上には神の視点があるのだろう——がデフォルトとして組み込まれている。

それにしても、日本語の文章技術は、助詞の使用に尽きるのではないかという気がしてきた。