特任講師観察記断章。多くの学生が多用するのにもかかわらず、ニュアンス的にピタリとハマった感じで使えていないものの筆頭に来るのは副詞だ。日本語を直訳するからだろうか、動詞プラス副詞を好んで使うわけだけれど、往々にしてピントがずれている。しかし、何度指摘しても、言い方を変えて指摘しても、学生はピンとこないようでもある。
Listen kindly to their worries という一節と学生のドラフトのなかで出会い、思わず頭を抱えてしまう。語順が妥当かはさておき、文法的には一応正しい。Listen to というコンビネーションは正しいし、worry を複数形にするのも問題ないし、their という所有代名詞も文脈上適切ではある。しかし、この kindly はどうにも変だ。listen を修飾している以上、これは「聞き方」が「親切」ということになるが、「親切な聞き方」とはどういうことなのだろう。
ということを考えていて気づいたのは、日本語の「悩みを聞く」は、ただ単に「話を聞く」だけではなく、「聞いた話にたいして何らかの反応を示す」ことを言外に含んでいるのではないかということ。つまり、学生が言いたいのは、「[患者が口にする]悩み事を無下に扱わず、親身になって耳を傾け、共感を示し、患者の気持ちに寄り添う」ということなのだと思うけれど、英語の「listen」は、純粋に「聞く」こと、または「注意を払う」ことである。つまり、「listen」はあくまで「インプット」であり、そこに「アウトプット」(たとえば相槌を打つ)のニュアンスはない。リスニング試験のインストラクションでお馴染みの Listen carefully を思い浮かべると、このニュアンスは腑に落ちるのではないか。
だとすれば、kindly が修飾すべきは聞き方ではなく、聞いたことにたいする反応の仕方のほうということになるし、そのことを踏まえると、listen carefully to their worries and take them seriously のようにするといいのかなと思うが、以上のような説明なしに、listen carefully to their worries に線を引いて、listen carefully to their worries and take them seriously と書いても、学生はなぜこのように直されたのか/直さなければいけないのか、その理由を理解できないだろうし、ここで書いたような説明をコメントとして入れたところで、学生が十分に理解するかは未知数であるし、かりにこのケースについてはなんとなく理解したとしても、次回以降、動詞プラス副詞のフレーズを使うときにそのことを思い出し、英語表現において妥当な言い回しを探してくれるかどうかは、ますますおぼつかない。