うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。カトラリーの使い方または片手の使わなさ。

アメリカ観察記断章。カトラリーの使い方については以前書いたことがあるけれど、アメリカ人は基本的に左手(利き腕ではないほうの手)を使わないし、使わないどころかテーブルの上にすら置かないのが普通で、ステーキのように両手でフォークとナイフを使わなければいけないときでも、肉を切り終えるやすぐさまナイフを置いて利き手でフォークを取り、左手をテーブルの下におろしてしまうのが普通だということをかなり前に書いたはずだけれど、今回のアメリカ旅行中にレストランやフードコートを見ていて新たに気づいたのは、スプーンやフォークを口に持っていくときの角度が日米で違うらしいということだった……と書きつけながら、もしかすると日米の違いではなく、自分のカトラリーの使い方が特殊なだけかとふと思うのではあるけれど、それはさておき、アメリカだと、スプーンにしろフォークにしろ、柄と口が直角に近くなるようなかたちで、つまり食べ物をフォークで突き刺したあと手首をヒョイと手前に返し、肘を支点に腕から先をコンパスのようにクルリと回転させ、だいたい60度くらいの角度で右斜め前方から食べ物を口に運ぶのが一般的であるように見えるけれど、この角度が日本だとかなり浅くなるのではないだろうか、つまり、日本だと、食べ物を掬ったあと、肘を固定せずに肩から引くように腕を手前に平行移動させ、唇の横のほうから30度くらいの角度で気持ち横からスライドさせるように食べ物を口に運ぶのが一般的なふるまいではないかという気がする、というのを短く言い直すと、アメリカ人はカトラリーの先っぽから食べる、日本人はカトラリーの腹というか横から食べる、となると思うのだけれど、これが箸を使うことに慣れているせいだからだろうかという気がするのは、箸先で口内を指すような向きで食べるのは安全とは言い難いし(フランクフルトだったか綿菓子だったかの割り箸が喉に刺さったという話は一時期大きなニュースになっていた)、安全面を抜きにしても単純に使いづらいと思うのだけど、それはたぶん日本の箸がそこまで長くないからだろうし(長かったら手首のスナップだけで口に運べてしまうだろう)、食器を持ち上げて食べるせいでもある(唇と食器の接触面に食べ物を運ぶには、カトラリーを横向きにしたほうが接地面積が広くて効率がよい)のだと思うものの、アメリカと日本の違いの話というよりは、自分がたまたまそういう食べ方をしているという話をしているにすぎないような気がしてきた。