うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。利き腕でないほうの手の不器用さ。

アメリカ観察記断章。利き腕でないほうの手の不器用さ。相変わらず週一で日本語学校でのボランティアを続けている。毎週ほんの3時間ちょいだけれど、子供たちとこういうふうに定期的に顔を突き合わせるのは本当に初めてのことだ。そしてこの先の自分の人生でこんな機会は二度とないようにも思う。だからだろうか、土曜日をどこか心待ちにしている自分を見つけてしまった。それはさておき、子供たちがひらがなやカタカナを書くのを観察していて気づいたことがある。この子たちは左手を紙の上にそえることを知らないらしい。右手で紙を押さえつつ鉛筆を動かしている。だから曲線をきれいに描くことができない。自由に動かせるのが親指人差し指中指だけだし、可動範囲が相当せまいからだ。利き腕でないほうの手を使わないという身体所作は、食器の扱いとどこか共通するところがある。大学のカフェテリアで発見したことだが、多くのアメリカ人はスプーンやフォークを持たないほうの手をテーブルの上に置かない。片手で食べているといって差し支えないような姿勢なのだ。これと併せて言えるのは、子供たちの書く姿勢がかなりでたらめであるという点だろう。背筋を伸ばして書く、という意識がまったくない。アメリカにおける身体のディシプリン化のゆるさを痛感させられる。