庭仕事はつづく。ツタの成長速度には目をみはるものがある。ツルはどこか昆虫のようだ。表面にびっしりと強い産毛が生えていて、少し赤味がかっている。先端は触覚や脚のようだ。ほかの植物の枝や茎を支柱のように使い、絡みつき、大きな葉を広げ、光を奪う。密集し、風通しが悪くなる。カメムシが気持ち悪いほどの密度でツルにまとわりついている。それを力任せに引き剥がす。日常のなかでここまで無造作に何かを暴力的に扱うことはない。庭の厄介者だから雑に扱ってよいのだろうかとも思いながら、暴力の賢明な発散のさせ方の技術について何となく考えていると、アパートの向かいの道路では小学生低学年から未就学児ぐらいの子どもたちが遊んでいる声が聞こえてくる。キャスターボードに乗った女の子が「動画撮って」と親にねだっているのを聞いて、「そうか、いまはもう写真じゃないんだな」と感心したり――それにしても小学生くらいから動く自分が自己意識に内面化されるというのはちょっと想像しがたい――男子たちが「バーリアー!」と叫んでいるのを聞いて、「そうか、それはいまでもあるんだな」と驚いてみたり――このバリアの元ネタは何なんだろうとふと思う――しているうちに、45リットルの袋5つ分もツタを引き剥がしたものの、根株に除草剤を打ち込めたのはほんの3つほど。まだまだ先は長そうだ。