アメリカ観察記断章。ビーチタオルというジャンルのタオルがある。普通のバスタオルより一回りかそれ以上大きい。素材や織りはさまざまだが、特別な仕立てになっているわけではないし、特に明確な規定があるわけではない。しかしあえて言えば、表裏があるタオルなのかもしれない。
というのもビーチタオルの主な用途は、濡れた体を拭くことではなく、砂浜の上に敷いてそのうえに座ったり寝そべったりすることだからだ。ビーチタオルは「敷物」扱いに近いところがある。パイル状のタオルの裏とはいえ、直に地面に置くと後で砂を払うのが面倒だろうな、と家事優先で考えてしまう自分がいる。もちろん日本によくあるビニールシート系の敷物がないわけではないが、それはどちらかというと少数派という気がする。
しかしここで見えてくるのは、日本と西洋(ここに中東を含めてもいいのかもしれない)では、布物にたいする意識が違うのかもしれない、という点だ。アメリカの雑貨店や家具屋で絶対売っているもののひとつにThrowがあるけれど、これはいまだにいまひとつ用途がわからないでいる。あえて日本語にすれば「掛け布」だろうか。薄手の織物で、ソファーの背にかけたり、家具にかけたりするものらしく、用途は多様である。サイズもさまざまで、使おうと思えばいろいろなかたちで使えるのだと思う。
ひとつ言えるのは、日本では敷物が独立した特殊ジャンル(地面や床に敷くため「だけ」のもの)であるとすると、西洋の「ラグ」は多目的だ、ということだろう。日本の文脈では、敷物は一般の生地や織物とは異なる別ジャンルであるように思う。ゴザやムシロという敷物があり、絹や木綿による織物がある。ところがアメリカでは敷物と掛け物のあいだにそれほど明確な区別があるわけではないらしい。日本でお馴染みのブルーシートは極めて日本的な産物であるように思う。