ケベックシティ3日目午後前半。議事堂見学で思った以上に時間を食ってしまったけれど、今日の本来の目的地であった美術館に向かう。その道は、『地球の歩き方』に言わせると、パリのシャンゼリゼ通りを彷彿とさせるとのことだが、どうだろう。広い道と並木はそうかもしれない。しかし、それよりも注目すべきは、議事堂があり、向かいにも政府関連の建物があるこの周辺は、ある特殊なビジネス街であるという点だろう。レストランはあるが商店がない。マンション的なものもアパート的なものもあり、人は住んでいるにもかかわらず、である。
ケベック美術館の入口右手には、ガラス張りで採光抜群のスペースがカフェになっている。メインビルディングは地下1階、地上3階で、今日は1階が特別展(カナダのとある企業家による20世紀を中心とするカナダ絵画の個人コレクション)、2階がカナダのコンテンポラリー、3階が先住民アート(イヌイット)と戦後のデザイン(椅子や器など)となっていた。
本当は他に別館がいくつかあるようだが、あいにくなことに、そのすべてが改修中とのこと。時間がなかったのでちょうどよかったとの言えるし、これだとややボリューム不足とも言える。そのなかで圧倒的に面白かったのは建物自体かもしれない。かなり天井を高くしており、開放感があるし、空間がとにかく広々として、伸びやか。白という色がそのよう印象を増幅させるとともに、清潔感と清廉さを演出している。だからこそ、そのなかにポツンと置かれた色鮮やかな積み木のようなかたちのソファーがいっそう映える。
カナダ美術はまったく知らなかったので、「the Group of Seven」からして初耳だったけれど、ヨーロッパから距離的に遠い地で彼の地のトレンドをリプレイするときのジレンマという意味では、日本の西洋画家たちの苦境と共通するところがあるのではという気がした。要するに、亜流の領域でもがいている感じがした、ということだ。西洋絵画で言えば、時代も地域も微妙にずれるものが、奇妙に混交している感じ。
そのなかで面白いと思ったのは、七人組のひとりのローレン・ハリス。すべての絵が面白いとは思わなかったけれど、構図を作るセンス、どのトレンドを取り入れるかのセンスが、頭一つ抜けている。
その後のカナダ美術(と言っても、くだんの個人収集家のコレクションにあるカナダ美術ということだけれど)を見ていると、どこかで、先住民アートの隠然たる影響があるような気もしてくる。どこか具象的で、西洋的な透視図法とは別の空間構成が顔を出すような気がする。
全体的に、ニューヨークのアートシーンに例えるなら、ブルックリン的な感じなのかなと思う(モントリオールの美術館をメトロポリタン美術館やMoMAに比べるとしたら)。しかし、やはり、ひと粒もふた粒も小さいというのが正直な印象かもしれない。
その中でやはり突出しているのは先住民アートであり、イヌイット品々は数でも質でも見るところがある。
社会見学なのか、小学校中学年ぐらいの
子たちが、先生たちと、キュレーター(だろうか?)に率いられて美術館を回っていた。解説がわりと本格派だったのに驚いた。
ローカルな美術館の可能性について考えさせられた。