うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

質のいい動き(笈田ヨシ『見えない俳優』)

「舞台での動きは質のいいものであるべきです。僕は舞台で行う全ての行為を丁寧に演じるよう心がけています。水を一杯飲むにしても、まずは指でそのコップの感触を味わい、それを持ち上げる時に全身御神経をそれに集中し、コップを口にあてた時にその感触を唇で確かめ、水か下の上に流れ込むのを感じ、そしてそれが喉を通り過ぎて行く。その行為の細部を丁寧に追って行きます。それが質のいい演技だと思っているからです。/ところが日常生活はどうでしょう。喉が渇いたら、ただ水をゴクリと飲むだけで、その過程を感じることなど面倒くさくてやっていません。たぶん舞台と同じ様に、各瞬間の行為に集中して、その事に小さな喜びを味わって行くならば、日常生活の喜びはもっと違ったものになるでしょう。」(笈田ヨシ『見えない俳優』86‐87頁)