今日付けで単位取得満期退学になる(はず)。1999年入学だから13年も同じ大学に籍を置いていたのか。そう思うととても不思議な気持ちになる。森と秘密基地の雰囲気があった駒寮、おどけたダンジョンのような旧図書館がなくなった。コンクリ打ちっぱなしの図書館と近代的なアドミニ棟がその後釜に座り、高層ビルのような18号館がキャンパスを睥睨するようになる。うさんくさい同窓会館はきれいなファカルティハウスに姿を変えた。学内寮の記憶を抹殺するかのように、モダンな図書館と対をなす生協食堂と新キャンプラのモダンさがわずかに残っていた妖しさのようなものをキャンパスから追い払ったのではないか。自分の大学大学院生活はこのキャンパスの変容と並走していた。駒場はきれいになった。便利になった(と思う)。しかしそれと同時に、何かがなくなってしまったように思う。ごく私的な感想ではあるが・・・13年前、父から贈られた日本近代文学全集をちまちま馬鹿正直に読み進めながら井の頭線に揺られ、本を閉じることができないまま改札をくぐり、人の流れに身をまかせるようにして正門をくぐったあのキャンパスには、鬱蒼と茂る木々と古臭い建物の醸し出す魅惑的な薄暗さと心を高鳴らせる不気味さがあった。しかしそれは、もう、記憶の産物になってしまったのだろうか。年をとり、異国の地にいて、ただ感傷的になっているだけかもしれない。しかし、自分にとってのキャンパスの原風景、それはもう、あそこには存在していないのかもしれない。だとすると、ここで大学から学籍を抜くことがなぜか必然であるように思えてきた。