うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

20191228 Day 6 アレクサンドリアの博物館と図書館。

ラクションにもずいぶん慣れてきた。あれは威圧というよりも、音によるウィンカーなのだと思えるようになってきた。信号があってないようなところでは、視覚情報だけでは不十分であり、つねに音で周囲に知らせる必要があるのだろう。だからクラクションがひっきりなしに鳴っているのだ。

アレクサンドリアはかなりコンパクトな街で、ダウンタウンと呼べる圏内は歩いて回ることができる。しかし、すこし遠出しようとすると、車が必要になってくる。アレクサンドリアは規模から言うとエジプト第二の都市らしいが、あまりそのような雰囲気は感じない。カイロが圧倒的に巨大すぎると言うべきなのかもしれない。人口はカイロの半分以下のようだから、この印象は案外間違っていないのかもしれない。

国立博物館は小ぶりなヴィラのなかにあり、地下1階に地上2階とコンパクトな展示だけれど、展示物はそのぶん厳選されており、これだけでエジプトとアレクサンドリアの歴史的重層性が体感できる造りになっている。地下がファラオ期、1階がギリシャ・ローマ期、2階がイスラム期。

すでにカイロの博物館で見てきたものばかりといえばそのとおりではあるのだけれど、カイロ考古学博物館が混沌と言いたくなるほど雑多な提示であったのにたいして、こちらは西欧的な基準の「ミュージアム」そのものにほかならない。ガラスケースに収められ、キャプションがついており、あちらこちらに説明用のパネルがある。そのおかげで、何となくごっちゃになっていたギリシャ期からローマ期への移行がやっと整理できた。

アレクサンダー大王による大遠征とその支配が紀元前300年ちょっと前から、大王の配下が始めたエジプト支配がプトレマイオス朝(世に名高い図書館や大灯台が作られた時代)で、その王朝の最後の統治者であるクレオパトラがシーザーと結ばれその後さらにアントニーと結ばれるが(ギリシャ化されたファラオ/ファラオ化されたギリシャであったプトレマイオス朝共和政ローマの融和の時代)、ふたりはともにローマによって滅ぼされる(アクティウムの海戦)。紀元前30年頃のことだ。その勝者であるアウグストゥスが初代ローマ皇帝となり、ローマ帝国支配が始まるが、その時期のアレクサンドリアは不遇の時代でもあった。政治的叛乱は軍事的に圧殺される。イスラム帝国マムルーク朝期に一時復興するも、その後また低落し、ケープタウン周りの東方経路が見つかり大航海時代が始まると、海運の要としての湾岸都市の重要性はさらに低下する。ナポレオンのエジプト遠征によって街はふたたび軍事的要所となるが、19世紀の最初の半世紀に街の近代化を推し進めたのは、オスマン帝国の属州エジプトの総督ムハンマド・アリーの手腕である。19世紀末以後はイギリスによって占領され、そこから完全な独立を成し遂げるのは1950年代のことである。

古代のアレクサンドリア図書館は焼失しており、いまの図書館は、古代の跡地に建てられたという。半円形の本体に斜めの屋根という印象的なデザインはノルウェー設計事務所によるもので、1990年代から着手され、2000年代初めに完成した。オープンスペースとなっているリーディングルームは世界一の広さらしい。古代図書館で巻物をしまっていた穴をモチーフにしたという片側の壁が防音壁になっていて、図書館内は意外なほど静かだ。開架図書は意外と少ない。近くにアレクサンドリア大学があるからなのか、勉強している若者グループが多い。

入場はかなり面倒。手荷物検査はすでに慣れているが、手持ちの本まで調べられ、スタンプを押された。本の持ち出しを防ぐための措置なのだろう。たしかにエジプトの物価水準を考えると、本はかなり高価だから、その配慮もわからないではないけれど、そのわりには出るときのチェックが雑。

無料英語ガイドツアーに参加すると、かなりの数の参加者がいた。30人以上はいただろうか。ガイドの発音だと「アレグザァンドリィア」という感じで、「グザ」と濁音。ガイドブックだと「アレキサンドリア」だし、ダレルの有名な連作小説だと『アレクサンドリア四重奏』だし、アラビア語だと「イスカンダル」という感じらしい。

リーディングルームには著名な文学者や文筆家の彫像が飾られている。アラブ世界で有名な人たちが多いが、イプセンガンジーなどもいた。

地下のほうにいろいろな常設展がある。図書館にあちこちに飾られている彫刻の作者である作品があり、エジプト各地の工芸的なものの展示があり、エジプトの画家の作品展がある。サダト博物館などというものまである。ある意味とてもエジプト色が強い。

入場料とは別にさらに上乗せで入館料を取られるアンティーク博物館は、内容的には、国立博物館と重複する部分もあるが、古代に的を絞っているだけ、こちらのほうが内容は濃い。とくにネルソン島というアレクサンドリアから張り出したところにある小島から発掘された陶器の展示が個人的にちょっと興味深かった。マニュスクリプト博物館は正直余分に払ってまで見るほどのものではなかったけれど、イスラム世界においてコメンタリーが余白にどう書きこまれるのかを直に見れたのはよかった。

このふたつの博物館はきっちりと入館券をチェックしないので、買わなくても入れてしまった気がする。付言しておくと、エジプトでチケットを買うのは意外と面倒。なぜなら、おつりがないと言われることが結構あるから。朝行った国立博物館は入館料が100EGPで、200紙幣で払うと、「いま100紙幣のおつりがないから後でとりに来て、入場券の裏のここに100って書いていたから、これと引き換え」と言われる。おつりを計算するのが面倒なのか何なのか、80のところで200出すと100はないかと言われることがある。

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