うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2022-02-19から1日間の記事一覧

理解を埋め合わせる友情(ジャン=ミシェル・ネクトゥー「序論」『サン=サーンスとフォーレ――往復書簡集1862-1920』)

「おそらく、最も注目に価すると考えられることは、サン=サーンスがたとえフォーレをもはや理解しなくなっても、彼を大家と見なし続けたことであろう。フォーレは実際、サン=サーンスの作品の明快で公正な性向を、常に保っていたが、サン=サーンスは、か…

「私は繊細さの領域をいっそう広げました」(J・M・ネクトゥー『ガブリエル・フォーレ 1845-1924』)

「フォーレはまさに陶酔に近い喜びをもった中庸の音楽家なのであり、したがって、彼が伝えようとする深い内容やその哲学に気づくことなく、性急で注意を怠った聞き方をすれば、その音楽は優柔不断で単調なものにしか聞こえないであろう。/けれども、かつて…

自伝的小説かもしれないもの:小林エリカ『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社、2021)

小林エリカは不思議な書き方をする。 パラグラフが短い。 一文で一段落ということもめずらしくない。 個人的にはノベルゲームを思わせる形式だが、ライトノベル的と言えるかもしれない。すくなくとも、いわゆる純文学に特有の重厚で粘着質な文体の対極。軽く…