うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

堕落した社会で立派に振る舞う人々が聖人(ヴォネガット『国のない男』)

「彼女はこう書いていた。「わたしはあなたの意見を聞きたいのです。わたしは四十三歳で、ようやく子供を産もうと思うにいたりました。でも、不安でしょうがないのです。こんなに恐ろしい世界に新しい生命を送りこんでいいものなのでしょうか」……わたしはこう返事した。生きていてよかった、と思わせてくれるものが音楽のほかにもあります。それは、いままでに出会った聖人たちです。聖人はどこにもいます。わたしが聖人と呼んでいるのは、どんなに堕落した社会においても立派に振る舞う人々のことです。」(ヴォネガット『国のない男』114‐15頁)

 

 

 

"If they didn't [throw away their educations], there is no way their uninhibited guessing could go on and on and on. Please, don't you do that. But if you make use of the vast fund of knowledge now available to educated persons, you are going to be lonesome as hell." (Vonnegut. A Man Without a Country. 86)

 

"If there's anything they hate, it's a wise human. So be one anyway. Save our lives and your lives, too. Be honorable." (Vonnegut. A Man Without a Country. 93)

 

 

「なぜ今日、これほど多くの人々が離婚するのだろう? それは、われわれのほとんどが、家族を大きくしようとしなくなったからだ……あるときナイジェリアでイボ族のひとりと知り合った。彼は親族が六百人いて、その全員をよく知っていた。ちょうど奥さんが赤ん坊を産んだばかりで、それはどんな大家族においても最高のいい知らせだということだった。/彼ら夫妻は赤ん坊を連れて親族全員に会いに行く。老若男女すべての親族に会いに行くのだ。赤ん坊のほうも、それほど年上でもない親族、つまりほかの赤ん坊に出会うことになる。そこそこの年になっていて、足腰のしっかりしている親族はみんな赤ん坊を抱いて、あやして、ばぶばぶとか言ってやって、美人だねえとか、おお男前じゃないかとか声をかけてやる。/そんな赤ん坊になってみたいとは思わないだろうか?/できることなら、魔法の杖を振って、あなた方ひとりひとりに大家族を授けてあげたい。」(ヴォネガット『国のない男』58‐59頁)

「いまの若い人たちが気の毒で、かける言葉もない。精神的におかしい連中、つまり良心もなく、恥も情けも知らない連中が、政府や企業の金庫にあった金をすべて盗んで、自分たちのものにしている、それがいまの世の中だ。」(ヴォネガット『国のない男』96頁)