うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

2021-08-26から1日間の記事一覧

アガンベンの思考のスタイル:ジョルジョ・アガンベン、岡田温司訳『書斎の自画像』(月曜社、2019)

本は読まれるのではない。むしろ、時間を超えた記憶できないほど彼方の点から到来してくる、忘れがたくも散り散りの一連の思い出を通して、たどたどしく辿られるのである。/このようにして、わたしはいちばん愛読する本たちを読んできたし、再読している。…

堕落した社会で立派に振る舞う人々が聖人(ヴォネガット『国のない男』)

「彼女はこう書いていた。「わたしはあなたの意見を聞きたいのです。わたしは四十三歳で、ようやく子供を産もうと思うにいたりました。でも、不安でしょうがないのです。こんなに恐ろしい世界に新しい生命を送りこんでいいものなのでしょうか」……わたしはこ…

決められない疑似民主制:市民参加の平田オリザの『忠臣蔵2021』

20210606@静岡県舞台芸術公園 野外劇場「有度」 武士のアイデンティティを探す話――平田オリザ作の『忠臣蔵2021』のあらすじを一文で強引にまとめればそうなるだろう。250年以上にわたる太平の時代が始まって1世紀近くが過ぎた頃に勃発した出来事に巻き込ま…

すべてを自由にする(シラー『人間の美学教育について』)

"A noble spirit is not satisfied with being itself free; it must set free everything around it, even what is lifeless [Ein edler Geist begnügt sich nicht damit selbst frei zu sein; er muss alles andere um sich her, auch das Leblose in Frei…

最高の共通意図の獲得(ワーグナー「未来の芸術作品」)

「芸術的人間は、ドラマのなかで自分とは異なる一個の人物を演じることによって、自己の特殊な存在を人間一般に通じる存在へと拡張する。自分とは異なる人物の個性を完全に理解して他人を演じるためには、芸術的人間は、自分の殻を完全に破らねばならないが…