うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

「人間の運命を人間自体に返す」(バルト「ブレヒト、マルクス、歴史」)

「彼の演劇は活動家にはあまりに美学的と映り、耽美主義者にはあまりにコミットしていると映るのだ。だがそれも当然で、というのもまさしく彼が狙っているのは、目がみえないとはどういうことかを舞台にのせるという、ごく限られた地帯なのだから…彼にとっては、「歴史」の上に演劇を設立するとは、マルクスがラサールに求めていたような、たんに過去のありのままの構造を表現することだけではない。それはとりわけいかなる人間的な本質も拒むことであり、人間性について歴史的でない、いかなる現実も認めないことであり、永遠の悪は存在せず、治癒可能な悪だけが存在すると信じることである。要するに、人間の運命を人間自体に返すことである。それゆえに、ブレヒトの作品には戦闘も、偉人も、一大スペクタクルも、運命もないにもかかわらず、その演劇はわれわれの時代でもっとも歴史的であるのだ。なぜなら「歴史」を考察する時に、もっとも困難かつもっとも必要であるのは、歴史にのみもとづいて歴史を考察することであり、「自然」の誘惑、アリバイ、慰めを拒むことであるからだ。」(バルト「ブレヒトマルクス、歴史」著作集2巻256‐57頁)