うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

おかしな夢

最近よくおかしな夢を見る。夢は映像的でほとんど言語的ではなく、鮮明さとピンボケが同居している。今日見た夢はまったく破天荒だった。

曲がりくねってはいるが路肩がないので見通しは悪くない車線の広いきれいに舗装された山道で昼間に車を走らせていると、濃紺の車の列に追いかけられる。そのなかにはオープンカーもありドライバーの姿が目に入る。しかしなぜか俯瞰的映像で、運転しているらしい自分の見ているものにしては上からすぎるし、視界も広すぎる。追突されんばかりに煽られてとうとうセーフティーゾーンの草むらに逃れると、なぜか自分の体はハンドルを握る右手を残して窓から投げ出され、一緒に草むらに突っこんできた車に跳ね飛ばされそうになる。実際、車は踏みにじられた。「次は自分の番か」と身構えたその瞬間、場面転換。

まるで山の頂上にある展望台から下を見下ろすかのようだ。バラバラになった車の部品が山沿いに落ちていくのだスローモーションで見えるが、映像の速度は一定ではない。ものすごいスローから少しずつ加速していき、しばらくすると普通の時間の流れに戻るが、フォーカスは安定しておらず、フレームも右往左往している。パーツのいくつかはすでに地面にちらばっており、道を塞いでいるため、渋滞になりかけている。蛍光色のセーフティーベストを着たラティーノとおぼしきオッサン数人がすでに掃除をはじめていた。

まだスローモーションで垂直に落下している気分で、「これは俺のせいなのか」と戸惑いながらこの光景をぼんやり眺めていると、突然、山の下の地面のある一角に焦点が合う。オイルにまみれた部品だとかバラバラになったパーツのあいだに、自分の黄土色の肩掛けカバンが横たわっているのが目に飛びこんできた。場面転換。

もはや落下しておらず地面を歩いている。カバンに近づく若者数人に向かって早口の英語で「それ俺のカバンなんだ、探してたんだよ、どうもありがとう」と言って(ここを英語で言ったことは夢から覚めたときもはっきり覚えていた)ひったくるようにカバンを奪う。手にカバンの感触を覚えないうちに意識が途切れた。場面転換。

日本の安っぽい旅館のような、縦長の畳敷きの部屋にうつぶせにつっぷしている。そばには取り戻したカバンがあったが、細かなガラスの破片がまとわりついていたし、部屋のいたるところに破片がちらばっていた。この部屋にはあと二人、いまはいないけれど同居人がいるのだということが直感的にわかる。

開け放しのドアからスピーカーで増幅された声が聞こえてくる。なぜか「いまは夕暮れ時だ」という気がした。「このテロは宿題をやりたくないといって学校を脅す行為であるがそれに屈服することはない」というようなメッセージだ(英語だったと思うが、意味内容だけが頭に入ってきたので、どの言語だったのかは起きたときすでに思い出せなかった)。自分が疑われていないことに安堵するが、それと同時に微妙な罪悪感に襲われる。そしてまた意識が途切れる。

どうやらもうひとりの同居人が戻ってきたらしく、彼が自分の右隣から声をかけているらしい。「起き上がれないんだ」とどうにか答えると、体を起こすのを助けてくれる。彼の手には薬の袋が握られており、「alcohol」という文字だけが奇妙なほど目に突き刺さる。何か右腕に注射のようなものを打たれたのか、また意識がぼんやりしてくる。開け放たれているドアの向こうはすでに暗がりにつつまれていた。しかしそのむこうから、自分を逮捕しにきたらしい数人の人々のざわめきがおぼろげに感じられたあたりで、完全に意識が途切れた。ここで目が覚めた。