うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

アメリカ観察記断章。見知らぬ人と目を合わすことについて。

アメリカ観察記断章。見知らぬ人と目を合わすことについて。日本を離れてもう五年目になるから自分のなかの日本の記憶はだいぶ薄れてきてしまっているのだけれどさりとてアメリカ生活の体験が自分を深いところで形作っているわけではなくてそれだからこそ自分の感性の妥当性について疑問を抱きつつあるところなのだが、ともあれ、アメリカは他人に対するハードルの低い社会だと思う。たとえばスーパーでちょっとすれ違うとき、なんとなく自然に視線が合い、まったく赤の他人なのに、にっこり笑って「ハーイ」というような雰囲気になる。視線が交差することを恐れない、むしろそれを積極的に求めていく、それがアメリカのデフォルトであるように思う。いい意味での開け放しの歓待感。しかしこれはもしかすると、アメリカ社会では「偶然に」すれ違う人々がすでに、「必然に」選別されているからかもしれない。自分が日常的に訪れる場所がアメリカ社会の相当な上澄みであることは否定できない。しかしそれを差し引いても、アメリカ社会は開けていると思う。