うろたどな

"These fragments I have shored against my ruins."

適当比較日本語論。「○○なんだけど」という面白い言い回し。

適当比較日本語論。「○○なんだけど」というのはとても面白い言い回しだ(文例。「あれ超ヤバいんだけど」)。他者に同意を求めているようで自己完結している。「けど」は逆接を思わせるが、ここに否定の主節が加わることはない(「一見○○に見えるけれども、実際は××である」)。主観的好みを述べて同意をもとめているようでもあるが(「俺あれすごいヤバいと思うんだけどお前どう思う?)、その反面、自分の美的判断の責任を引き受けることをあらかじめ拒否しているかのごとき言い回しでもある(「どうよ、お前あれヤバいと思わねぇ?」)。肯定でも否定でもなく、肯定でもあり否定でもある。他人の同意を求めながら自分の価値観を肯定しようとしつつ、他人の同意を前提条件にしてすでに自分の価値判断を肯定してしまっている。さて、これは西洋語のロジックにのせるのがきわめて困難な文章ではないか、西洋語はどうもこういう責任の所在がはっきりしない言明を好まないらしいから。to meを伴わないit seems/it appears...doesn't it?がニュアンス的にかなり近いのかもしれない。しかしこれでもまだ日本語の曖昧さが明確になりすぎるように思う。日本語の曖昧さ、または曖昧さを厳密に表現することを可能にする日本語のファジーな厳密さ。